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カクテル好きの男たち
第7章 百合の花

ほどなくして美智子は顔を真っ赤にしてきた。

体力が落ちているところへ
一気にアルコールを胃袋に流し込んだのだから
酔いが回るのも早い。

「私ね…
マスターに抱いてもらおうとここへ来たの」

言わなくてもいいのに
酔いが美智子を大胆にさせていた。

「そうなんですか」

亡くなったオーナーマスターの声が
珠代の心の中に甦る

『珠代、あの店はね
寂しい人たちの吹き溜まりだよ
心を温めるために私はそう言う人たちを
誠心誠意抱いてあげるのさ』

後を引き継いだ秀一もまた
オーナーの意をくんで
寂しい女たちを抱いていたのだろう…

少しだけ秀一に嫉妬したが
それがこの店のコンセプトなのだから
今さら腹をたてる気もない。

「私でよければ…
お相手しましょうか?」

今は珠代がこの店を仕切っているのだ。
寂しい客が来たのならば
珠代が慰める番だと
彼女はカウンターを出て
美智子の隣に腰かけた。

「いえ…お気持ちはありがたいんですが…
私、そういう趣味は…」

さりげなく美智子の手を握ってきた珠代の手を
スッと引いて拒んだ。

「私だって、そんな趣味はないけれど…
この店を引き受けてから
帰りは午前様が続いて、
最近は主人に構ってもらえなくて…」

だから…寂しいもの同士で慰め合いましょうよ
そう言って珠代は美智子に体をすり寄せた。

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