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梨果の父サイドストーリー
第1章 愛娘の裸身
その翌年8月の出来事……。

恒例となった裸婦クロッキー会の日。
コミュニティーセンターの美術室の準備も四年も続けていると慣れたもので、今や私一人でもできる。

途中、田村さんと川瀬さんが来て教室内のセットを手伝ってくれた。


ブルルルルブルルルル

携帯電話に着信が入った。

「はい。」

『洋子です。向かっている途中で体調が悪くなってしまって……事務所に代替を頼んだのですが……』

「それはそれは、お大事にしてください。…こちらはなんとかします。」

通話を切った。


「どうかしましたか?」

焦った様子が伝わったようで川瀬さんが訊ねてきた。

「いま洋子さんから電話で体調を崩して今日は来られないと……」

「ええっ!」

「どうしたよ、お二人さん。」

「いや、田村さん。なんだか洋子さんが急病で来れないって今先生に電話があったらしい。」

「なんと!そりゃ困ったな先生。私たちもみんなも楽しみにしてるんだよ。」

「裸婦クロッキーは別途徴収だから皆も黙ってないぞ。こりゃたいへんだ。」

「いまモデル事務所に当たってもらっています。」

「見つかったとしてもそれから到着が何時になるかわからんぞ?」

「大学にも連絡してみます。」

「あちゃー洋子さん来れないのかー。残念だなあ……」

「川瀬さんほんと洋子さん気に入ってるな。」

「いやーあのプロポーションは最高だろう。」

「まあそうだけどな。」

「おいおいキミキミー。動機が不純だぞー?」

「おっと失礼。」

「あはははは。」


大学もモデル事務所も今探していますと告げられるだけで折り返しの連絡は来ない。
続々と受講者が集まってきた。

「先生、もうみんな集まりましたよ。」

洋子さんが来れないとの話はすでに知れ渡り、教室内がざわついていた。

「先生どうするよ、みんなどうなるんだと言ってるよ。」

「ウチのかあちゃんでよければ呼ぼうか?」

「おたくのカミさん70じゃないかよ。」

「あはははは!」

……それだ。家族に頼るしかない。
しかし妻も50間近で娘は子供……どちらにせよ皆を納得させるには厳しい……

しかし今は贅沢を言っていられない。とりあえず本人たちに聞いてみることにした。
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