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梨果の父サイドストーリー
第1章 愛娘の裸身
妻の携帯にかけてみる。
……10コール鳴らしても出ない。
……更に10コールしても出なかった。

次に娘にかけてみる。
……3コール

『もしもしお父さん?』

娘が電話に出た。
とりあえず訊いてみることにする。

「今日これからコミセンの絵画教室なのだが、洋子さんが体調崩して急に来れなくなったんだ。大学とか方々あたったのだが代わりのモデルがみつからなくて。梨果、悪いけど今から来てやってもらえないかな。」

『えっ!?今日の教室って裸婦クロッキーの日じゃん!ムリムリ!何言ってるの!信じらんない!』

「そこを何とか頼む。正直この教室は裸婦クロッキーがあるから受講者数を保っているようなものなんだよ。」

……子供には余計な話だ。


『…………わかった。用意したらすぐ行くよ。』

娘が来てくれることになった。
近所だしすぐに来るだろう。
とりあえず人員としては確保できたので一安心した。

……と思ったところ。

「今の電話、奥さん?」

「いや、娘です。」

「え?娘さんて梨果ちゃんの事?」

「ええ。」

「え?先生、梨果ちゃんてまだ中学生じゃ?」

「えっ?中学生?!」

ざわめく受講者たち。

「子供じゃないか。」

「はぁ?洋子さんの代わりが中学生って……」

「えー。帰ろうかな。」

わかってはいたが、いざこういう事になると未だに“女の裸目当て”の受講者がいるのが浮き彫りになる。しかしここは美術を教える場だ。

「申し訳ないですが今回はうちの娘で行います。子供ですがたまに違った題材を描くのも経験になるはずです。性別年齢は関係なく人物画の勉強になります。ここは芸術を学ぶ場なのをお忘れなく。」

ざわつく教室内をなんとか収めることができた。
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