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第30章 体験個室

そんなヤジなど心得ているという風に、受付嬢は自信たっぷりに動じる気配はありません。

「木偶の人形でも、ダッチワイフでもありませんわ。人工知能を組み込まれた精巧な人造人間がお相手をしますので、場末のソープランドでは決して体験することのできない、夢の世界にご案内できるのですよ。必ず満足して頂けることと確信しておりますわ」

「ほーう、あんたも体験して、満足したのかい？」

「はい、もちろんでございます。社員は全員、実体験の研修をしておりますので、自信を持って断言できるのですわ」

「ほーう、本物の男よりも……良かったってことか？」

受付嬢はうなずいて、自身たっぷりの表情で説明を続けます。

「えー、それでは皆さま、正面横にあります電光写真パネルをご覧ください」

受付嬢が指差した電光掲示板には、様々な衣装を身に着けた人物たちが写されています。

「えー、各個室でのお相手を、掲示板で確認してお選びいただけます。殿方には、小学女子から老女まで、職種は看護師や女刑事やくノ一忍者やプロレスラー、さらに白人、黒人、クレオパトラに楊貴妃と、お好きなお相手をお選びください。ああーー、女性のお客さまにも、イケメン少年や痴漢や富豪、ターザンに仮面ライダーにスパイダーマン、もちろん女性が女性を、男性が男性を選んでも構いませんわ」


受付嬢の説明は明快です。
初めての体験にみんなは期待を膨らませ、電光写真パネルに視線を走らせウズウズしています。