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混沌の館
第15章 千夏
 何気ない一言がきっかけだった。

『わたし、よく東京にお買い物に行くんですよ』

『よかったら、東京でお会いできませんか?』


 千夏からのメールになるほどと私は思った。

 東京なら双方からアクセスし易い。後は時間さえ合わせれば良いのだ。

 千夏は平日の昼間しか家を空けられない。ならば私が合わせるしかない。しかし、それは有給休暇を取れば良かった。昔に比べ、今は会社の方が有給休暇を消化しろと煩い。月に一度くらいならどうということはなかった。


 それからは、お互いに何時にするかというデートプランのメールのやり取りで浮かれる日が続いた。

 彼女も子供の行事や時間割によって都合の良い日悪い日がある。私も出来るだけ仕事に支障を来たさない日を選び、月末にその日を決めた。



 千夏から、『写メ送った方が良い?』とメールがあったが、私は敢えてそれを断った。千夏の容姿はきっと私の想像するとおりだと思ったからだ。

 会えないのであれば写メをもらったかも知れない。だが、会えるのであれば、その時の為に愉しみは取っておこうと思ったのだ。彼女もまた、私の写メを要求する事は無かった。



『来週だね』



『明後日だね』



『明日だね』



 私たちの交わすメールは、カウントダウンとなっていた。





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