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想い人
第1章 彼氏の想い人
「美空、ホントごめんな。9日なら大丈夫だから」
顔の前で両手を合わせる透也。

余程大切な用事なんだね。

ホントは私の誕生日を最優先して欲しいのに……。

ていうか、それより大切な用事って何?

「どんな用事?」

「え?」

「記念日よりも大事な用事」

「あー…」

まただ……。
透也の視線が泳ぐ。


─────女?

嫌な言葉が頭を過り、ブンブンと首を横に振る。


「美空? 9日じゃダメ?」

縋るような透也の瞳に胸がキュンとなる。

惚れた弱み?
そんなのズルい。

でも、そんな顔されたら、いいよって言いそうになっちゃうよ。


「ダメ! 用事終わってからでいいから会いたい!」

困ったような視線を投げかける透也。

あぁ、私子供だなぁ……。

はぁーって透也がため息を吐き出すから、私は思わず俯く。


透也の大きな手が頭に乗せられた。

「……ごめんな」
ポンポンと小さな子をあやすかのように私の頭を叩く透也。


─────彼女…だよね?

まだまだ透也の理想の”大人の女”には程遠い。



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