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想い人
第8章 【続】第三章・勘違いの想い人
「何か甘くていい香り〜」

家中に広がるケーキの匂いに、お母さんはルンルンでキッチンへと入ってきた。


「プリンカップケーキ焼いてみたの。お母さん、味見してみて?」

最後の1個のプリンカップケーキ差し出す。

「プリンカップケーキ?」

怪訝そうな顔をして、お母さんはそれを受け取るとスプーンを付けた。


「うわ、生だ!」

スプーンで掬えば、中味はプリン状。お母さんは口も付けずに私に突き返す。

「プリンカップケーキなの!」

少し声を荒げてそう言いながら、私はまたお母さんにプリンカップケーキを押し付ける。


「カップケーキなんでしょ? 全然火が通ってなくない?」

中味をスプーンで掬いながら、お母さんはそれの匂いを嗅いでみせる。

「えー? プリンだからじゃないの?」

プリンも生地も同じような色だし、よくわからないよ。


「おバカ! 竹串刺した?」

「竹串? 何のために?」

「焼けてるか確認するためでしょうが!」


─────成る程!
そうやって焼けてるか確認するんだ!


「まさか美空、自己流で適当?」

「えへっ」

舌をペロリと出して誤魔化す。

でも、この無謀な”自己流”と、生焼けを3個も食べた事…
次の日から私は死ぬ程後悔するのだった。


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