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お前の奥さん、やられちゃうぞ!
第1章 お前の奥さん、やられちゃうぞ!

そうなると、自分たちで探し出すしかない
オレは絶望した。都内には星の数ほどもホテルがある。
この瞬間にも、美樹は…

古瀬は言う。
「我が社には、優秀なスタッフがいる。すぐに特定できる。勝負はそれからだ」

オレは、以前古瀬の事務所に行ったことを思い出した。
古い雑居ビルの狭い一室。
社員なんていない。
探偵業みたいなものは、古瀬が一人でやっているのだ。
電話番でいたのは、パートの近所のおばあさん。

もうすぐ80になるというおばあさんだ。
品の良いおとなしそうなおばあさんが、机にちょこんとヒマそうに座っていた。

「カズヨさんは、とんでもなく優秀な人だ。公安の仕事をやっていた。政界の大物のそばにも長くいたらしい。詳しく聞こうとすると、『お墓まで持っていくお話です』って言って、教えてくんないだよなあ。戦前は中国で女スパイみたいなことをやっていたらしい。英語と中国語はペラペラだぜ。」

カズヨさんのことはいい。美樹のいるホテルのことだ。

「まだ会社に電話がつながる時間だ。三角の会社から千崎が東京に来た時いつも泊まっている宿を聞き出し、ホテルに確認することぐらいカズヨさんにとっては簡単だと思う。カズヨさん、演技も上手いぜ。」
「千崎の母親にでも何でもなって、ホテルから情報を聞き出すことくらいやるぜ。ホテルは絶対宿泊客の情報は外部には漏らさない。でも、おばあちゃんからの電話で事情が事情ならどうかな?」
古瀬の話しぶりは確信に満ちている。
古瀬は、インカムを携帯電話に切り替えて、カズヨばあさんに指示を出し始めた。

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