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お前の奥さん、やられちゃうぞ!
第1章 お前の奥さん、やられちゃうぞ!
古瀬は渋滞した車列をかわしながら、都心へと急ぐ。
オレは、スクーターの機動性と古瀬のライディングテクに舌を巻いた。
混んでいる時間帯の道路では、クルマだったらとてもこの機動性は望めない。
オレはこれでも昔はバイク乗りだ。古瀬がスクーターを倒し込むたびに、体を体重移動して協力する。
よく見ると古瀬のスクーターには大小のアンテナがいくつも立って、前面のフロント・カウルの内側には大きな液晶画面がある。
当時はポータブルナビゲーションなどまだ発売されていなかった時代だ。
古瀬お得意の手作り電子機器のようだ。
ノートパソコンのナビの案内に従って、スクーターで目的地に急ぐ。
カズヨおばあさんと通話していた古瀬が、
「場所がわかったぞ」
と、インカムで叫んだ。
「緊急走行だ」
と言う。
古瀬の言う「緊急走行」とは、赤信号になるとエンジンを止めてスクーターを押す。
オレも走ってスクーターを押す。
エンジンを止めたスクーターは、道路交通法上は歩行者だ。
歩道に乗り上げて押しながら進む。
右折・左折はエンジンを止めたスクーターを二人で押しながら横断歩道で道路を横断し、進行方向の道路に出ると二人またがって再び発進だ。
道行く人が驚いたように、スクーターを押しながら走る男二人を見つめている。
そんなのに構っていられない。