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茅子(かやこ)の恋
第9章 新しい生活

「航、ホントに頑張ってるじゃん」
「当たり前!」
「あ、また生意気!」
ふたりで学校の廊下を並んで歩きながら、母子は軽口を交わしていた。進路指導の三者面談が終わり、航の進路が明確になった。息子は母を追い、看護師になろうとしていた。そしてその成績は十分、国公立の看護学科を狙えるほどだった。
夕方の面談が終わり、母子はそのまま繁華街に向かっていた。翌日は土曜日で茅子は休みをもらっていた。久しぶりにふたりは外でご飯を食べ、映画を見る予定を立てていた。12月の夕暮れは早く、既に日は落ちて暗くなっていた。茅子は歩きながらショーウインドウに映るふたりの姿に気が付いた。
そこには制服に黒いコートを羽織った航と、グレーのツーピースの上にダークブルーのコートを着た茅子が並んでいた。低めの黒いパンプスを履いた茅子と比べても、航は母の背をずっと追い越していた。そして航の背格好は、別れた夫に本当によく似ていた。茅子は目元がそっくりになった息子に抱かれるとき、若いころの自分をいつも思い出していた。
航は歩きながら母の姿を横目で、チラチラと追いかけていた。その日の三者面談の際、初めて母に会った担任教師は、挨拶で明らかに動揺していた。そして同級生たちの母を見る目も、間違いなく他の母親を見る目とは違っていた。幼稚園の頃からずっと感じていた誇らしさに、美しい母を自分のものにした優越感が加わっていた。
「当たり前!」
「あ、また生意気!」
ふたりで学校の廊下を並んで歩きながら、母子は軽口を交わしていた。進路指導の三者面談が終わり、航の進路が明確になった。息子は母を追い、看護師になろうとしていた。そしてその成績は十分、国公立の看護学科を狙えるほどだった。
夕方の面談が終わり、母子はそのまま繁華街に向かっていた。翌日は土曜日で茅子は休みをもらっていた。久しぶりにふたりは外でご飯を食べ、映画を見る予定を立てていた。12月の夕暮れは早く、既に日は落ちて暗くなっていた。茅子は歩きながらショーウインドウに映るふたりの姿に気が付いた。
そこには制服に黒いコートを羽織った航と、グレーのツーピースの上にダークブルーのコートを着た茅子が並んでいた。低めの黒いパンプスを履いた茅子と比べても、航は母の背をずっと追い越していた。そして航の背格好は、別れた夫に本当によく似ていた。茅子は目元がそっくりになった息子に抱かれるとき、若いころの自分をいつも思い出していた。
航は歩きながら母の姿を横目で、チラチラと追いかけていた。その日の三者面談の際、初めて母に会った担任教師は、挨拶で明らかに動揺していた。そして同級生たちの母を見る目も、間違いなく他の母親を見る目とは違っていた。幼稚園の頃からずっと感じていた誇らしさに、美しい母を自分のものにした優越感が加わっていた。

