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茅子(かやこ)の恋
第9章 新しい生活

「お母さん、施設をやめようと思ってる…」
「どうして?」
「大学の先輩に、一緒に仕事しない?って誘われてる」
グアムで母子が語らい合った際、茅子が話した夢があった。それは看護師として人の役に立ちたいという夢だった。大学の先輩はその夢をかなえ、今は大きなボランティア組織で働いている。
「オレ…いいよ思うよ」
「航はきっと、そう言ってくれると思ってた!」
ベッドの中で、母は嬉しそうに息子の顔中にキスをした。航もいつも前向きで頑張る母を誇りに思った。それは航が大学生活にも慣れた、6月の夜だった。
大学の後期授業が始まる10月、母は新しい病院に就職することになった。それは母がふたりで暮らすマンションを離れ、遠い街で息子と別れ暮らすことを意味した。航は寂しさがあったが、母を応援したかった。6月に聞いた母の気持ちを航はずっと尊重していた。そしてふたりは最後の夜、ひさしぶりに身も心もすべて裸になった。
「…写真、撮るの?」
母の前で息子は父にもらったカメラを構えた。大学の合格祝いの一眼レフは航の希望だった。
「ダメ…?」
「ダメじゃないよ…」
母は微笑むとベッドの上でうつ伏せになった。シャッターの音が、無言の寝室に響いた。
「どうして?」
「大学の先輩に、一緒に仕事しない?って誘われてる」
グアムで母子が語らい合った際、茅子が話した夢があった。それは看護師として人の役に立ちたいという夢だった。大学の先輩はその夢をかなえ、今は大きなボランティア組織で働いている。
「オレ…いいよ思うよ」
「航はきっと、そう言ってくれると思ってた!」
ベッドの中で、母は嬉しそうに息子の顔中にキスをした。航もいつも前向きで頑張る母を誇りに思った。それは航が大学生活にも慣れた、6月の夜だった。
大学の後期授業が始まる10月、母は新しい病院に就職することになった。それは母がふたりで暮らすマンションを離れ、遠い街で息子と別れ暮らすことを意味した。航は寂しさがあったが、母を応援したかった。6月に聞いた母の気持ちを航はずっと尊重していた。そしてふたりは最後の夜、ひさしぶりに身も心もすべて裸になった。
「…写真、撮るの?」
母の前で息子は父にもらったカメラを構えた。大学の合格祝いの一眼レフは航の希望だった。
「ダメ…?」
「ダメじゃないよ…」
母は微笑むとベッドの上でうつ伏せになった。シャッターの音が、無言の寝室に響いた。

