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茅子(かやこ)の恋
第10章 旅立ち
裸の肩をシーツから出しぐっすり眠る自身の姿を眺めながら、航は母がベッドで語った言葉の意味を考えていた。母は前夜、最後のセックスが終わるとシーツの中で航に話しかけた。まだ荒い息を整えながら、母は息子の背中を抱きしめ脚を絡めていた。

『お母さんと離れてる間、恋をして大人になって』
『もう…オレとはしないってこと?』
びっくりした航が振り返ると、母は優しくキスをしてきた。そしてクチビルを離すと、航の顔をじっと見つめた。

『お母さん、たぶん航と離れられない…』
『オレも…』
そこで母の言葉は終わった。航は何かを言おうと考えたが、なにも言葉が浮かばなかった。母はシーツを引き上げると航と自分の身体に覆った。そしてもう一度息子の頬にキスをすると、母はゆっくりと目を瞑っていた。

一眼レフを置くと、航は目を瞑って母への思いを巡らせた。ひとしきり考えると、航はベッドから跳ね起きた。洗面所に向かい冷たい水で顔を洗うと、航はリビングで学校の課題に取り組み始めた。

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