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恋する妻
第6章 パン屋の姉弟
「その日にしたの?」
「…してない」
郁は本当に、その日はしていません。しかしその日は、まだ続きがありました。

「悠の部屋、ホントに狭いの…」
小さなユニットバスが付いていますが、脱衣場はありません。郁はシャワーを浴び終えると、ユニットバスの引き戸を開け、顔を出しました。目の前に小さなキッチンがあり、右が小さな玄関、左に悠が寝ている小さな6畳間です。窓際のベッドに寝ている悠は、目を瞑ったままです。郁が小さく声を掛けましたが、悠は熟睡したままでした。郁はかけてあった悠のバスタオルで全身を拭きました。郁はその裸体に、悠の若い男の匂いを纏いました。それはまた、郁を興奮に導いていました。

静かにユニットバスを出ると、郁はバスタオルのままベッドまで来ました。悠が眠っていることを確認すると、バスタオルを外し全裸になりました。そしてそのまま、悠のベッドに潜り込みました。

「悠ぅって、声をかけたけど…ずっと眠ってた」
郁は悠を抱きしめると、その唇にキスしました。そしていつしか、そのまま眠りに落ちていました。ふたりは全裸のまま、小さなベッドで抱き合っていました。

「気付いたら夕方、真っ暗になってた…」
「悠は?」
「…まだ眠ってた」
これまで何日も熱で唸っていた悠は、疲れからか本当に眠り続けていました。それは逆に、郁が心配するほどでした。郁はその日、当然家に帰るつもりでした。しかし僕が出張でいないこともあり、悠の様子次第と考えていました。悠はその時、郁の胸で寝息を立てていました。しばらく剃っていない悠の伸びた髭が、郁の胸の小さな突起を刺激していました。

「あたし、帰らなきゃって…」
抱いていた悠を、郁は優しく離しました。そしてベッドから下りると、眠っている悠にキスをしました。真っ暗な部屋の中で、郁はあらためて自分が全裸なのに気付き、急に羞恥心に襲われました。急いで下着を着け、洋服を纏いました。カーテンの空いた窓から、外の街灯の明かりが、部屋に挿し込んでいました。



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