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恋する妻
第4章 セクシーサンタとトナカイ
夜8時まえ、僕は離れた場所で身体を隠しながら、デパートの従業員出口を見ていました。すると背の高い男と小柄な女が、一緒に出てきました。郁と悠でした。郁は膝下まである黒いダウンコートを着ていました。コートの裾から、黒いショートブーツを履いた郁の白い足が見えていました。そして同じようなダウンを着たジーンズ姿の悠と、寄り添うように駅までの道を歩き始めました。デジャブのような光景でしたが、あの夏と比べ明らかにふたりの距離感が縮んでいました。僕はふたりの後ろを、距離を取りながら歩いていました。胸の鼓動が激しくなり、僕はおかしくなりそうでした。

ふたりはあからさまに手をつないだりはしませんが、歩きながら時々目を見合わせていました。そしてデパートから離れると、駅とは反対に歩き出しました。僕はスマホを取りだすと、ムービーを撮りました。ふたりは暗い画面の中、楽しそうに歩いていました。

不意に男が後ろを振り向きました。僕は慌てて横を向いて、電話をしているふりをしました。男は周囲を見渡すと、郁に何事かを囁きました。僕はスマホで顔を隠しながら、ふたりを横目で見ていました。そして郁も一瞬振り向きましたが、僕に気付いていません。ふたりはまた、前を向いて歩き始めました。そしてふたりはその手を、小さく繋ぎました。

通りに出るとふたりはタクシーを拾い、夜の街に消えました。僕はその姿を、呆然と見送りました。

悠とタクシーに乗り込んだ郁に衝撃を受け、僕はそのまま繁華街を彷徨っていました。しかし12時過ぎに意を決し、家に帰りました。郁はもう、ベッドで休んでいました。僕は何も言わず一人で夕食を取ると、ベッドに入りました。そして何事もなかったかのように朝を過ごすと、仕事に行きました。

「昨日、郁のお店に行ったよ」
「うそっ!何時頃来たの?」
翌日、ふたりで夕食をとっていた時、僕は動揺を隠しながら郁に話しかけました。郁は本当に驚いた顔でした。

「夕方…郁、サンタさんだったね」
「やだ、見たの?恥ずかしい…」
「郁、ミニスカだったね」
「…だって、仕方なかったんだもん」
僕がそう言うと、郁は恥ずかしそうに口を尖らせました。僕がさらにからかうと、顔を赤くしてちょっと怒ったように食卓を立ちました。
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