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メダイユ国物語
第4章 非情な実験
オズベリヒは説明を終えると、マイクを取って通話スイッチを入れ、
「実験を終了する。そいつを檻に戻せ」
と、隣の室内で長銃を手に待機していた兵士に命じた。彼らは檻の脇をすり抜け、奥の扉から出る。彼らと入れ替わるように、扉から白衣姿が二人入って来て、手にした金属製のトレイを檻の背後にある小さな扉を開いて中に置いた。トレイには肉の塊が載せられている。餌を使ってドワモ・オーグを檻の中へ誘導する手筈だ。肉の匂いを嗅ぎつけた彼は、惹きつけられるように檻の中へ入って行った。白衣姿の男のひとりが、すぐさま檻の扉を閉めて錠を掛けた。獣は肉を手に取り、貪るように口に運ぶ。
「くっくっくっ、性欲を満たした後は食欲ですか。いやはや、人間もあの様に本能の赴くままに、素直に生きた方が幸せなのかも知れないですね。運び出せ」
マレーナに向けて一方的に実験後の印象を語ると、オズベリヒはマイクに向かって続く指示を出した。隣室では白衣姿二人が檻を運び出していた。
扉が閉まり、室内は床に横たわるファニータだけになった。彼女は未だ放心状態だった。
「ファニータ! これを外して。彼女の所へ行かせて」
マレーナは手枷の嵌められた両腕を向けてオズベリヒに言う。ところが彼はかぶりを振り、
「いいのですか? 貴女が一部始終を見ていたことを知ったら、彼女はどう思うでしょうね」
「――それは」
マレーナは言葉が出なかった。
「彼女のことは我々にお任せください。大事な実験の被験者です。彼女の身体はこの施設の医療機器を使い、万全の体制で管理します。粗末に扱うことは絶対にいたしません」
彼らの目的はファニータにドワモ・オーグの子を産ませることだ。にわかに許せることではないが、今となっては彼らに委ねるしかなかった。それに彼女の最も恥ずべき、男と――いや獣の雄と交わる姿を自分が見ていたことも、絶対に彼女には知られたくない。
「分かりました――彼女を、ファニータのことをお願いいたします」
涙ながらに、マレーナは頭を下げて懇願した。
「承知いたしました、姫君」
オズベリヒは彼女に最敬礼すると、再びマイクを取って隣室に声を掛けた。
「被験者をベッドに載せて部屋へ運べ。丁重にな」
「実験を終了する。そいつを檻に戻せ」
と、隣の室内で長銃を手に待機していた兵士に命じた。彼らは檻の脇をすり抜け、奥の扉から出る。彼らと入れ替わるように、扉から白衣姿が二人入って来て、手にした金属製のトレイを檻の背後にある小さな扉を開いて中に置いた。トレイには肉の塊が載せられている。餌を使ってドワモ・オーグを檻の中へ誘導する手筈だ。肉の匂いを嗅ぎつけた彼は、惹きつけられるように檻の中へ入って行った。白衣姿の男のひとりが、すぐさま檻の扉を閉めて錠を掛けた。獣は肉を手に取り、貪るように口に運ぶ。
「くっくっくっ、性欲を満たした後は食欲ですか。いやはや、人間もあの様に本能の赴くままに、素直に生きた方が幸せなのかも知れないですね。運び出せ」
マレーナに向けて一方的に実験後の印象を語ると、オズベリヒはマイクに向かって続く指示を出した。隣室では白衣姿二人が檻を運び出していた。
扉が閉まり、室内は床に横たわるファニータだけになった。彼女は未だ放心状態だった。
「ファニータ! これを外して。彼女の所へ行かせて」
マレーナは手枷の嵌められた両腕を向けてオズベリヒに言う。ところが彼はかぶりを振り、
「いいのですか? 貴女が一部始終を見ていたことを知ったら、彼女はどう思うでしょうね」
「――それは」
マレーナは言葉が出なかった。
「彼女のことは我々にお任せください。大事な実験の被験者です。彼女の身体はこの施設の医療機器を使い、万全の体制で管理します。粗末に扱うことは絶対にいたしません」
彼らの目的はファニータにドワモ・オーグの子を産ませることだ。にわかに許せることではないが、今となっては彼らに委ねるしかなかった。それに彼女の最も恥ずべき、男と――いや獣の雄と交わる姿を自分が見ていたことも、絶対に彼女には知られたくない。
「分かりました――彼女を、ファニータのことをお願いいたします」
涙ながらに、マレーナは頭を下げて懇願した。
「承知いたしました、姫君」
オズベリヒは彼女に最敬礼すると、再びマイクを取って隣室に声を掛けた。
「被験者をベッドに載せて部屋へ運べ。丁重にな」