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メダイユ国物語
第6章 小さな慰み者
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 パウラが部屋を出てからしばらく間を置き、マレーナも彼女の行方を探るために私室を後にした。夜が更け、部屋の外はかなり冷え込んでいるため、マレーナは寝間着の上にストールを羽織っている。国王の各部屋はやはり扉が施錠されているため入れない。出入りが許されている共用の浴室と手洗い、それに台所には誰もいなかった。

 エレベーターと非常階段への扉前には、なぜか見張りは立っていない。確認したところ、エレベーターは稼働せず、非常階段への扉は開くことが出来なかった。

(あの子がこの塔の外へ行ったのだとしたら、わたしには探しようがない)

 そう考えて諦めかけたマレーナの目に、ふと羽織ってきたストールが入った。

(そう言えばあの扉――)

 外へ持ち出した覚えのないストールが落ちていた、部屋の扉を彼女は思い出した。

(いえ、あの部屋は未使用の空き部屋のはず。でも――)

 もう一度、あの部屋へ行ってみようと考えたマレーナは、私室から一番遠い位置にあたるその部屋へ向かった。


 回廊を半周ほど巡り、目的の空き部屋の前に立つマレーナ。特に異変はなさそうだ。やはりここは無関係なのだろうと思いつつ、彼女が扉の把手に手を掛けると「ガチャ」と音を立てて扉が動いた。

(昨晩は開かなかったのに……)

 マレーナはゆっくりと扉を押し開く。中は完全には真っ暗ではなく、微かな明かりが灯っていた。扉の奥は更に狭い廊下になっており、壁には三つの扉が等間隔で並んでいる。

(確かここは……)

 そこは、以前この塔で王族を警護する衛兵たちの詰め所として使われていた部屋だった。並んでいる扉は、昼夜問わず任務に就く衛兵たちが休憩や仮眠を取るための部屋の扉である。王族の警護として近衛隊が新設されて以降、彼らには城内の別の場所に専用の広い部屋が与えられたことから、ここは使用されなくなったのだとマレーナは聞かされていた。自室と同フロアではあったが、彼女はこの部屋へ足を踏み入れたことがなかった。

「あ……ああ……」

 奥の方から微かに声がする。子供が啜(すす)り泣く声のように聞こえる。

(パウラ?)

 マレーナは廊下の奥へ歩を進めた。
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