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メダイユ国物語
第2章 ラバーン王国のプリンセス
「式は盛大に行うように準備を進めているとお母様からは聞いているわ。わたしも今から楽しみ」

「お妃(きさき)様がですか? 勿体ないお話です」

 頬を紅潮させ、俯くグレンナ。普段は気丈な彼女が、このように恥じらう姿を見せるのは、かなり珍しいことだ。彼女はマレーナの両親、つまり国王と王妃からも信頼され、大層気に入られていた。

「あなたの結婚式をみすぼらしい物にしてしまっては、わたしたち王族が恥を晒すことにもなってしまうもの。あなたも期待していいわ」

 言いながら、マレーナはグレンナにそっと抱きつく。すると、すぐさま

「……グレンナ、あなた前より胸が大きくなったんじゃない?」

 と、給仕服の胸元を隆起させる膨らみを凝視しながら真顔で尋ねた。

「え? そ、そんなことは……」

 グレンナは顔を赤くして答える。

「休暇の時はウィルハルトと会っているのでしょう? ひょっとして、彼とはすでに『そういう』関係だったりする?」

 そう言いながら、マレーナはグレンナの身体に触れる。肉付きがよく丸みを帯びて、以前よりも女っぽくなっているように思えた。

「め、滅相もございません……決してそのようなことは……」

「別に隠さなくてもいいのよ? 結婚するまで男女の契りは許されないとか、そんな慣習は時代遅れだわ。伴侶にする相手は、全て知り尽くしてから決めたいじゃない?」

 好奇に満ちた顔で尋ねるマレーナは、

「でも……さすがに赤ちゃんはまだよね?」

 と続けてグレンナに訊く。

「あ、当たり前です。ウィルハルト様も『まだ』そこまでは……あっ!」

 グレンナはマレーナの思惑に乗せられ、余計なことを口走ってしまったことに気付き、慌てて両手で口元を塞ぐ。実際、彼女はすでに婚約者とは肉体(からだ)を交える関係だった。

「ふふふ、グレンナは正直ね」

 いたずらっぽい笑顔を見せるマレーナ。

「あの……このことは、くれぐれもご内密に……」

 耳まで赤くしながら、グレンナは主(あるじ)に深々と頭を下げる。

「もちろんよ。ごめんなさい、あなたを困らせたかったわけじゃないの」

 マレーナは真剣な面持ちの侍女の手を取り、

「ふざけ過ぎたわ。絶対に誰にも言ったりしない。私たち二人だけの秘密にする」

 再び身を寄せ、彼女の耳元に囁いた。
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