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メダイユ国物語
第6章 小さな慰み者
「本当にごめんなさい、パウラ……わたし、どうかしてたんだわ」

 二人は大きなバスタブで、向かい合うように湯に浸かっていた。

「いえ……その、少しだけ……気持ちよかった、です……」

 主に気を使わせまいと、パウラはそう答えた。実際、ほんの一瞬ではあるが「このまま続けて欲しい」と考えたのも事実だった。彼女の顔が赤みを帯びているのは、入浴によるものだけでは、決して無かった。

「あなたに嫌な思いをさせたので無かったのなら、良かったわ。もう絶対にあんなことしないから、許してね」

「……もちろんです」

「そう、良かった」

 マレーナの顔に苦笑にも似た、ぎこちない笑顔が浮かぶ。

「――そうそう。パウラ、あなたに訊きたいことがあったの」

 いい加減に話題を逸らさねばと、マレーナは先ほど、パウラの帰りを待つ間に考えていた事を思い出した。

「何でしょうか?」

「あなた、『月のもの(生理)』はあるの?」

 突然の思いも寄らない問い掛けに、パウラはたじろいだ。
 もちろん年齢的にも、彼女も知識としては知っていた。だが――

「い、いえ、ございません」

 パウラは恥ずかしそうに答える。

「そう……」

 やはりそうか――マレーナの思った通りだった。

「恥ずかしいことではないのですよ? 個人差があることだから」

「……はい」

「パウラも知っているとは思うけど、生理は女の身体が赤ちゃんを産める準備が出来た証なのです。あなたは身体が小さいから、まだ早いと言う事なのでしょう」

「私は、これから先もずっと赤ちゃんを産めないのでしょうか?」

「そんなことはありません。身体が大人になるのが少し遅れているだけです」

 心配そうに上目遣いで見つめる少女に、マレーナは身を寄せて優しく諭す。だが、今現在、彼女の置かれた――男たちに身を差し出す、まるで慰み者のような――状況では、不幸中の幸いとも言えた。無遠慮に膣内に射精され続けたとしても、少なくても当面は彼女が望まない妊娠をする危険は無いと言うことだ。

(全て解決して事態が好転するまで、どうかパウラに初潮が来ませんように――)

 勝手な願いである。
 だが、マレーナはそう願わずにはいられなかった。

 そして、ここでもやはり、悲運の王女、マレーナの願いは、叶うことは無かったのである。
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