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プリンスの誘惑
第1章 ~スイーツ王子~

「あれ? 貸切だ」

 お昼時を過ぎた店内は、客の姿はなかった。

「ふふ、お帰りなさいご主人様」

 ニャンCafeのオーナーである、穂乃花は笑顔で出迎える。

 そして、訪れたのはスイーツ王子ことアイドルの珠里。彼はいつもの席に座る。


 注文は決まってココア、穂乃花はカウンターに入りココアを温める。

 店内は、有線からクリスマスソングが流れている。


「お待たせしました」

「ありがと、ねぇ穂乃花、ここ座って?」

「え……でも」

「お客さん居ないからいいだろ?」

 穂乃花は、ちょこんと珠里の隣に座る。
 珠里はカップに口をつけココアを呑む。

「珠里君、今日は溶かさないの?」

 カップには生クリームのチョコソース添えがついていて珠里はいつもの混ぜてから呑む。

「うん……たまにはね」

 と、彼は生クリームを指で掬った。
 そして、それを穂乃花の前に差し出す。

「舐めて?」

「えっ」

「生クリーム」

「でも……」

「舐めて?」

 珠里はニコっと微笑む。
 スイーツ王子の名は伊達じゃなく、彼は甘いものが好きだ。そして、甘いマスクをしている。

 穂乃花は少し頬を赤らめ珠里の指を舌先で舐める。生クリームの甘さが口に広がる。

「可愛いな穂乃花は」

 と、珠里は穂乃花をだき寄せ口づけをしてくる。
 ふあっと、カカオの香りが生々しい感触と一緒に伝わる。

 ぬちゃぬちゃと舌を絡ませ、それは本当に甘いキスだった。

「甘い……穂乃花は旨いな」

「んぅ……ぅ」

 キスの合間に、甘い言葉を囁き珠里は再びしたを絡ませてくる。


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