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それぞれの後編
第8章 サディスティック・マリッジ〜第三章・夏〜【一年目の記念日】
「何か悔しいーっ‼︎ 」
資料室で叫ぶ愛里咲。


先日の資料室での事件……

犯人はわからないが、どうやらファイルを片付けている最中に、誰かに突き飛ばされたらしい摩美。

脚立ごと倒れこみ気を失っていたところに、琉と愛里咲が運良く現れたようだ。
その際摩美は足首を軽く捻挫。

そして、今日の貼り紙事件。

被害者という絶好の席を手に入れた摩美は、席に座り堂々と携帯を弄って過ごす。

今まで以上に仕事をしなくなった摩美の尻拭いは、ようやく初心者マークの取れたばかりの愛里咲に回ってくる。

今も溜め込まれたファイルの片付けのために、愛里咲は1人残業をしていた。


(嘘ついて貼り紙を私のせいにして、更に仕事まで私に押し付けて…私の方が”被害者”じゃんっ‼︎ )

貼り紙については、各部署の部長が注意を促すという形で終わった。

町田や、松田、根岸、坂本は愛里咲を疑っていない。

男性社員のいないところでの話だが、そのうち琉の知るところとなるだろう。

やたらと琉に付き纏う摩美だから、その口から琉の耳に入る可能性が高い。

(…まさか琉ちゃんが私を疑うなんて……ないよね⁈ )

ジワリと浮かんだ涙を押し込めるように、愛里咲はキツく目を閉じ首を横にブンブンと振った。


「─────ぶっ⁉︎ 」

柔らかい感触が顔に押し付けられ、大好きな香りが鼻腔を擽る。

愛里咲は慌てて目を開き、顔に当たる柔らかいものを両手で掴んだ。

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