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それぞれの後編
第10章 サディスティック・マリッジ〜第五章・秋〜【前進するために…】
「森永さん! あなた、何回いえばわかるの⁉︎ 」

週明けのオフィスに、年配女子社員の木村のキーキー声が響いた。

怒られているのはもちろん、新人の森永摩美。

だが、

「木村さんの教え方がわかりにくいんです」

と、しれっと口答えする。


「今日は何時になったとしても、全部やり終えるまで帰らせないからね!」

「今夜遅くにやり終える仕事を見るのは明日の朝でしょ? だったら明日やっても変わらないじゃないですか」

「なっ……」

ピキピキと、木村のこめかみの血管が浮き上がる。


「この入力はこっちが午前中でこっちが午後! このコピーは16時までに終わらせて! わかった⁈ 」

「はーい」

ヒステリックに声を張り上げる木村を尻目に、摩美はコピーの資料を持って立ち上がる。

「あなたねっ、午前中の仕事をまず片付けなさいよ!」

「だって、ここうるさくて……やる気出ない」

盛大にため息を吐く摩美。


部署内の全員が、次に来るであろう木村の怒鳴り声に備えて耳を塞いだ。


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