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それぞれの後編
第10章 サディスティック・マリッジ〜第五章・秋〜【前進するために…】
(な…何が起こった…?)

琉の腕の中で、愛里咲の心臓はドクドクと忙しく動いていた。


(……とりあえず”不機嫌回避”出来たのかな?)

安心すると同時に込み上げる、琉を嫉妬させたという何とも言えない嬉しさ。

またまた緩み出す頬を、愛里咲は両手で引き上げた。



コツコツ…
早足の足音がこちらへ近付いてくる。

ハッとして2人は身体を離した。


「……お茶一つ追加頼む」

「ほえっ⁈ 」

突然の琉の言葉に、愛里咲は間抜けな返事を返していた。


「あら…千葉さんがお茶出しやらされてるの?」

「木村さん!」

給湯室に現れた年配女子社員の木村は、2人を見やった後、湯呑みを取り出し水を汲む。


「……また森永ですか?」

琉が困った様に笑いかければ、木村は大きなため息を吐いた。

「あの子の教育係続けてたら、本当にいつか胃に穴が開くわ…」

そう言うと、木村は薬箱から出した胃薬をゴクリと水で流し込んだ。


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