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それぞれの後編
第10章 サディスティック・マリッジ〜第五章・秋〜【前進するために…】
「お客様へのお茶出しは新人の仕事よ。あんまり森永さんを甘やかさないでね」

木村は頭を抱えながら、愛里咲にそう言う。

「すみません…」

「愛里咲と里中さんは知り合いなんですよ。なので、俺が頼みました」

愛里咲の言葉を琉が遮る。

木村は、そうだったの…と言った後にふーっと息を吐いた。


「森永さんにも困ったものね。入社して半年経つっていうのに、いつまでも使えない新人のままよ」

木村は、今度は大きなため息を漏らす。

「……私もずっと使えない新人って津川さんに怒られてましたから、笑えないです」

一年前を思い出し、愛里咲は苦笑いを返した。


「あら、ああ見えて津川さんは見る目はあるのよ? 本当に使えない子に仕事は回さないわ」

「え?」

「千葉さんが使える新人だったから、仕事を押し付けていたんじゃない?」


木村の言葉に、愛里咲は目を見開いた。

津川からイジメられているのだと思ってた。

でも実は、

(ちゃんと認めてくれていたんだ…)

一年前の、日付が変わる頃まで残業していた日々が報われた気がして、愛里咲の瞳にジワリと涙が浮かんだ。

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