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それぞれの後編
第20章 サディスティック・マリッジ【あとがきのあと】
根岸の機転により、漆黒のそれは明日配達の社内便へと紛れ込ませた。
宛先はもちろん副社長。
正直に出来なかったことを詫びる手紙を付けて、このまま穏便に終わりますようにと愛里咲は手を合わせる。
その、翌日───……
「………………」
出社した愛里咲のデスクの上には、見覚えのある漆黒の包みが、二つ。
恐ろしいことに、ご丁寧に手紙が添えられている。
互いに言葉を発することが出来ないまま、根岸と愛里咲は立ち尽くしていた。だが、意を決したように、根岸が包みの上の、これまた漆黒の封筒を顎で指す。
ゴクッと生唾を飲み込み、愛里咲は恐る恐るそれに手を伸ばした。
中には、几帳面に畳まれた便箋が2通。
「何で……2通……?」
そう言った後、不穏な空気を感じ取ったのか、慌てて口を噤んだ根岸が踵を返す。
だが、
「これ……副社長から、根岸さん宛てです……」
そろそろと愛里咲が差し出した便箋を、根岸も震える手で受け取る。
『先輩カップルは、双方からの報告書。一週間以内。』
実に達筆な文字は、墨を付けた筆で書かれていた。
「ああ…これ……筆ペンで書いた訳ではなさそうね……」
もはや現実逃避。根岸はそう呟き、漆黒の包みを一つ抱え上げて自分の席へと戻る。
「根岸さん……」
巻き込んでしまったことを心で詫びながら、愛里咲もまた震える手で便箋を開く。
『返却不可。次は夏川くんにどんなものをプレゼントしようか?』
─────っ‼︎
愛里咲は息を飲み、そして固まる。
それは愛里咲にとって一番怖い脅し文句。
これ以上副社長に逆らってはいけないと、愛里咲の第六感がけたたましく警鐘を鳴らした。
宛先はもちろん副社長。
正直に出来なかったことを詫びる手紙を付けて、このまま穏便に終わりますようにと愛里咲は手を合わせる。
その、翌日───……
「………………」
出社した愛里咲のデスクの上には、見覚えのある漆黒の包みが、二つ。
恐ろしいことに、ご丁寧に手紙が添えられている。
互いに言葉を発することが出来ないまま、根岸と愛里咲は立ち尽くしていた。だが、意を決したように、根岸が包みの上の、これまた漆黒の封筒を顎で指す。
ゴクッと生唾を飲み込み、愛里咲は恐る恐るそれに手を伸ばした。
中には、几帳面に畳まれた便箋が2通。
「何で……2通……?」
そう言った後、不穏な空気を感じ取ったのか、慌てて口を噤んだ根岸が踵を返す。
だが、
「これ……副社長から、根岸さん宛てです……」
そろそろと愛里咲が差し出した便箋を、根岸も震える手で受け取る。
『先輩カップルは、双方からの報告書。一週間以内。』
実に達筆な文字は、墨を付けた筆で書かれていた。
「ああ…これ……筆ペンで書いた訳ではなさそうね……」
もはや現実逃避。根岸はそう呟き、漆黒の包みを一つ抱え上げて自分の席へと戻る。
「根岸さん……」
巻き込んでしまったことを心で詫びながら、愛里咲もまた震える手で便箋を開く。
『返却不可。次は夏川くんにどんなものをプレゼントしようか?』
─────っ‼︎
愛里咲は息を飲み、そして固まる。
それは愛里咲にとって一番怖い脅し文句。
これ以上副社長に逆らってはいけないと、愛里咲の第六感がけたたましく警鐘を鳴らした。