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それぞれの後編
第21章 青天の霹靂
息が、上がる……

「ん…っ……ぁ……」

声が、抑えきれない……

抗えない。

抵抗虚しく脱がされる度、私の瞳から涙がこぼれ落ちる。


放課後の教室で、

私はあっという間に一糸纏わぬ姿にされていた。


「誰か、ぁンッ……来たら……っ」

「ん。愛里咲の裸、見られちゃうな」

フッと小さく笑いながら、夏川クンは私を見下ろす。

男の人特有の骨張った長い指が、私の指を床に縫い付けるかのように掬い取る。


逃げられない……

夏川クンの強い瞳から、逃げることが出来ない。

いつもの夏川クンじゃない。

意地悪でどこか愉しげな今の夏川クンは怖くて、私の瞳は止めどなく涙を零すのに……

心臓は爆ぜそうなくらい忙しく動いて、彼に惹きつけられてしまった視線と心は、もう逃げ出すことを拒み彼を見つめ続ける。


「な、つか……ぁっ……りゅ……ンッ」

苗字で呼び掛けて、慌てて名前を紡ぐ。そんな私の唇はすぐに彼の唇に塞がれて、抵抗の言葉も彼の舌に絡め取られて押し返される。


男の人とこういうことするのが ”初めて” な訳じゃない。夏川クンみたいに経験豊富じゃないけれど、私にだって今までに付き合った人くらいいる。

だけど、

溺れちゃう……

この、キスに……

夏川クンに……

溺れちゃうよ……!


いつも明るくて、皆に優しくて、皆のアイドルで、完璧王子様と噂される夏川クン。

そんな彼にこんなこと……

ただのクラスメイトとしか認識されてないと思っていたのに……


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