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それぞれの後編
第21章 青天の霹靂
誰にでも屈託無く向けられる笑顔。同じクラスになって、夏川クンと仲のいい女の子と友達になってから頻繁に話せるようになって、その笑顔を向けられることも増えた。

誰にでも優しい彼だけど、私が困っていた時にも真っ先に助けに来てくれた。

トキめかない訳がない。


授業中に何度も盗み見た彼の顔。真面目に勉強してる顔や、頬杖ついて窓の外をぼんやり眺める顔や、気持ち良さそうな寝顔。

体育の授業や休み時間に見せる運動神経の良さと、男の子同士でいる時の無邪気な顔。

視線を離せる訳がない。目を奪われない訳がない。

 
───ほのかな恋心を、抱かない訳がない。


そんな夏川クンに付き合おうって言われたんだもん。

芸能人と付き合えるくらいの奇跡だもん。

このまま流されちゃったっていい。

─────って⁉︎ ええっ⁉︎


「何⁉︎ やだ、ネクタイ……っ解いて!」

蕩けちゃうくらい熱くなった私の頭は、彼のネクタイでキツく結ばれた両手を見て一気に冷めた。

これじゃあ動けない!

恥ずかしくて隠していた胸元から、自由を奪われた両手が頭の上まで上げられる。

やだやだ!恥ずかしい!

火照る頬に、また新たな涙の跡が残った。


「オシオキ……だろ?」

悪びれる様子もない夏川クンの笑顔。

悪魔の笑みだ……

なのに、胸のドキドキが止まらない。身体全部が心臓になったみたいに、ドクンドクンと大きな音を立てる。


「恥ずかしいよ!ここ、教室だもん!教室で全裸なんて、私、痴女じゃん!そりゃ恥ずかしくて隠すでしょ!」


恥ずかしい。ドキドキする。苦しい。
溢れ出すいろんな感情を誤魔化すように叫べば、夏川クンはお腹を抱えて笑い出した。

〜〜〜〜〜悔しい!

なのに、ドキドキドキドキ……夏川クンの笑顔にときめいちゃう私は重症だ。 


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