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それぞれの後編
第21章 青天の霹靂
ビクビクと身体が小さく跳ねる。

何これ。止まらない。

はぁはぁと荒い息だけが口から零れ落ちて、声すら出せない。

何これ。何これ。頭の中が真っ白で、何も考えられないよ……


「誰がイッていいって言った?」

思わず謝ってしまいそうになる低い声。なのに今はそれすらスパイスのように私の身体を熱くする。

「……んっ……キャラ、変わってるよ」

腰が震えて、呼吸が整わない。そう強がりを零すのが精一杯。


私の中に、夏川クンがいる。


平凡な私が、普通なら掴まえられる筈ない最高級の幸せを手に入れた。そんな、味わったことのない幸福感に満たされる。

私の中の ”夏川クン” がビクビクと跳ねて、目の前の夏川クンが小さく息を吐き、その綺麗な顔を歪めて眉を寄せる。

苦しげにも見えて、妖艶な ”男” でもあって、快楽に歪められたその美しい表情を、今まで何人の女の子に見せてきたの? 

来るもの拒まずな夏川クン本人もその数を把握し切れない程いるだろう彼女たち…………なんだか、無性に腹立たしい。 

夏川クンを取り囲み、ハートマーク満載に ”琉くん♡” と甘い声で縋る女の子たちも、こうして身体を重ねた間柄なんだろうか。

夏川クンに名前で呼ぶように言われて、オシオキと称した快楽に酔いしれて、そんな関係を結んだ人たちなんだろうか。


「キャラ?ああ……こっちが素の俺。愛里咲にだけ特別」

ズルイ。

このタイミングで、眩しいくらいの笑顔で、そんな風に言われたら……自惚れてしまう。


「 ”御主人様” って呼ぼうか?」

少しだけ出来た余裕からの減らず口。

「そーゆーの求めてない」

つまらなさそうな夏川クンの返事に、一気に心が焦りだした。


ねぇ、夏川クン。もう手放せないよ。

夏川クンの気まぐれでエッチしただけ。それだけの関係で終わらせたくない。


……独占欲。

胸がざわついて、苦しくて、真っ黒い感情が湧き上がる。

何でもいいから、私だけの ”特別” が欲しい。


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