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それぞれの後編
第6章 サディスティック・マリッジ〜第一章・春〜【新入社員】
休憩時間を終え、女子社員たちの湯呑みを洗う愛里咲。
洗剤を使うため、リングは外してシンク横に置いていた。

「夏川さん? 千葉さん? 皆いろいろで何て呼べばいいかわからなくて」

愛里咲の後ろから摩美が話しかけてくる。

「あ、去年入籍して、今は夏川愛里咲です」

こんなに早く知られるならさっき言っておくべきだったかな……と愛里咲は少し後悔した。

「へぇ、琉先輩と?」

言いながら、摩美はシンク横に置かれたマリッジリングを触り始める。

「あ、うん。あのっ、指輪返して」

愛里咲は慌てて手の泡を流し、摩美の手に握られたマリッジリングに手を伸ばす。

「いいなぁ、千葉さん!」

言いながら、ひょいっと愛里咲の手を躱し、リングを眺める摩美。

(……夏川だってのに! )

「あの、大事なものだから…返して」

愛里咲は摩美へ手を出して催促した。

スルリと自分の左手の薬指に、愛里咲のマリッジリングをはめる摩美。

「琉先輩めちゃくちゃH上手だから、別れて以来全然イケなくなっちゃって」

「え?」

摩美の言葉に思わず固まる愛里咲。

(私にしか勃たないんじゃなかったの⁈ )

じわっと目頭が熱くなったのがわかる。

(そういえば津川さんに薬飲まされた時も反応してた!)

モヤモヤと込み上げる琉への疑念を振り払えないでいる愛里咲。
摩美はそんな愛里咲を、満足そうに笑いながら見ていた。
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