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それぞれの後編
第6章 サディスティック・マリッジ〜第一章・春〜【新入社員】
ようやく並べ終えた資料を見回し、愛里咲は安堵の息を吐いた。

「あの新人…あんまり甘やかすなよ」

愛里咲の頬を両手で挟み、琉の顔がグッと近付く。

「もっ…元カレ面ですか⁈」

端正な琉の顔がどアップになり、愛里咲は恥ずかしくなる。

「バーカ。あいつにやらせないといつまでも愛里咲がやるハメになるだろ」

「うん……」

琉との視線が絡み、唇が重ねられた。
チュッとリップ音を立て、琉の唇が愛里咲の下唇を挟み軽く吸った。

「指輪…簡単にくれてやるなよ」

愛里咲の唇を塞ぎながら、琉の右手が愛里咲の左手に絡められる。
絡められた琉の指が、確かめるように愛里咲のマリッジリングに触れた。

「…っ……あげないからっ!!」

そう言って、愛里咲の腕が琉の背中に回される。

(指輪も琉ちゃんも……誰にもあげないっ)
気持ちをキスで伝えるかのように、愛里咲は口腔内に押し入った琉の舌を奥まで吸い込み舌を絡めた。

「んっ……ふっ…う……」

愛里咲の口から漏れ出す甘い吐息と、舌が絡み合う水音が会議室に響く。

熱を帯びた身体を琉に押し付けた時、昼休みを報せるチャイムが鳴った。

「あ、やべ……佐藤さんと外で食うんだった」

スルリと離れる琉の身体。
突然の放置プレイに、愛里咲は半泣きで会議室を後にした。

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