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煌めく波濤(はとう)
第1章 煌めく波濤
 18

 風に乗って高台に望める、碧の女子高のチャイムの音色が聞こえてきた…

「あ…
 夏季講習が始まった…」
 波待ちをしている碧が、高台の校舎を見上げながらボソッと呟く。


「いいのか?…」

「うん全然いい…
 どうせ講習はボーッと流して聞いているだけだし、この波に乗ってる方が…」

 生きてるって感じがする…

 そう言ってきた。

「それに、わたし案外成績いいのよ」
 そうとも言ってくる。

「あ、そうか…」

 それは昨日からの会話でなんとなく伝わってきていたし…
 何より『獣医学部』志望と云う位であるから、成績が悪いはずがない。


「なんか風向きが変わってきたね…」
 すると、空を見上げながら碧は呟いてきた。

 サーフィンは風向きが最も重要で…

 波に対して正面から吹く風、つまり、陸地から海への方向に吹く風(オフショア)が理想なのだ…

「少し北風が混じってきたみたい…」

「うん、そうだな…」

 横風(サイドショア)や海側から陸地に向かって吹く風(オンショア)は、波の崩れ方(ブレイク)を乱し、下手すれば海面自体が荒れてしまい…
 サーフィンには適さなくなってしまう恐れがあるのだ。

 そしてどうやらこの風は、コンディション悪くなる方向へと吹き始めてきたようであった…

「そろそろ干潮が始まる時間だよね?」
 すると碧はそう訊いてきた。

「あ、うん、確かそうだな…」

 海には干潮(引き潮)と満潮(上げ潮)がある…

「じゃあ、アソコのポイントがいいかも…
 ねぇ純、そのポイントに行こうよ」
 と、いう事で、俺達は移動する。

「秘密の、チョー秘密のポイントがあるのよ」

 俺もこの土地に転勤して丸一年経ており、もうかなりこのエリアでサーフィンをしているが…

 碧曰くの、秘密のチョー秘密のポイントって?…

 まだ知らないポイントがあるのか?…

 そしてクルマに乗り、碧の案内でそのポイントに向かう…

「あっ、ここ、ここよ」

「あっ、ここって…」

 移動して約十分、ちょうど位置的には碧の女子高のある高台の岬をグルっと南向きに回った感じの高台の道路沿いの場所…

 眼下は約20メートル程の崖になっており、その崖下で…

 波が綺麗に割れていた…

「こ、ここは…」

 いわゆる『ポイントブレイク』という場所であった…




 
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