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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
 99

「でね、シャワーしてぇ、朝ご飯食べてぇ…

 そしてさぁ…

 また女の子になってさぁ…

 二人でお出かけを…

 デートをしようよ…」

 葵さんからの突然のそんな提案に僕は…

 ドキドキドキドキ…

 更に高鳴ってしまう。


「一緒にさぁ、あそこのショッピングモールへ行こうよぉ」

 クリスマスだしさぁ…

 それにこれからの駿のお洋服とか買わないとさぁ…

「え…洋服を買う?」

「うん、二人でさぁ、ショッピングしましょうよ」

「で、でも、お金が…」

 そう、僕はお金は無い…

 お小遣いは月5000円だ…

「ばぁか、お金なんて大丈夫よ、心配しないで…」
 葵さんは笑みを浮かべながらそう囁いた。

「え、だって…」

「お父さまからカード渡されてるから」

 好きに使っていいってさぁ…

「あ、そ、そう…」

 そう…

 葵さんはお嬢様だったんだっけ…

「うん、そう、わたしはお坊ちゃまのお嬢さまなのよ」
 満面に笑みを浮かべ囁いてきた。


 昨日…

 初めて女の子の姿をし…

 初めてお化粧をし…

 初めてウィッグを被り…

 ほんの約20分だったけどコンビニに…

 初めて外に、外出し、お買い物をし…

 そして今日…

 初めて二人でデートを…

 それもショッピングモールへ行き、女の子の服とかを買おうと言ってくる。

 つい、昨日の朝までは全く想像もしなかった…


 そしてあまりにも急に色々な事が起こり…

 高鳴りが…

 いや、違うんだ…


 高鳴り…

 昂ぶり…

 興奮…

 疼きが…

 激しく僕の心の中をウネリながら走り抜けていくんだ…

 
 そしてこのクリスマスの二日間が…

 僕の心を急激に…

 変えていく…
 
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