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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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 そして僕と葵さんはたくさんのショップを巡りながら、たくさんの洋服を買った…
 いや、僕は、買ってもらったんだ。

 それも、もちろん全部女の子の服と靴と、下着も…

「これで、明日から楽しみね」

「え?」

「ほら、これで毎日女の子になれる」

「あ…うん」

「これからは毎月さぁ、お買い物に行こうよぉ、色々買ってあげるからさぁ」

「え、あ、でも…」

「大丈夫、大丈夫よ、ウチはお金持ちだからさぁ」

 確かに葵さん家はお金持ちだ、だけど…

「大丈夫、お父さまは、わたしの好きにしていいよって云ってくれているから」

 それはそうだけど…

「え、じゃあ、駿は女の子にはなりたくないの?」

「あ、いや…」

 それは、もちろん…

 なりたい…

「でしょう、女の子になるのはお金も掛かるのよ」
 と、葵さんは明るく言ってきた。



 そして、もうこの姿にすっかり馴れた僕は…

 こうして二人で買い物をしていても平気になったし…

 気持ち良く感じてもいた…


 なぜなら…

 女の子の服って…

 男と違って、華やかで、明るくて、綺麗だから…

 もう…

 止められないかも…

 僕はすっかり女の子の喜び的なモノを感じていた。



 すると…

「ふうぅ、ヤバい、疲れちゃったわ」

「あ、だ、大丈夫ですか?、ごめんなさい」

「え、なんで謝るのよ」

「だって…」

 そうなんだ、葵さんはずうっと、ほぼ毎日家に籠もって生活してたんだ…

 だからいきなりこんなショッピングモールに出掛けたりしたら、疲れるに決まっていたのに…

「ごめんなさい、気付かなくて…」

「ううん、ヤダなぁ、謝らないで…」

 そもそもわたしが来たいって言ったんだからさぁ…

「帰りはタクシーにしましょうね」
 そして僕達はタクシーで帰宅した。

「あ、お父さま達帰ってきてる」
 葵さんはガレージの車を見て言ってきた。

「え、あ…」

 じゃ、女の子の姿じゃヤバいんじゃ?

「大丈夫よ、平気よ」

 葵さんは普通にそう言うのだが、普通にどう考えても…

 平気な筈がない…

 だって、この前ご両親に紹介された時には…

 男として挨拶をしたのに…

「大丈夫、平気よ」
 葵さんは僕のそんな心配を他所に手を引き玄関を開けた。

「ただいまぁ、帰りましたぁ」
 



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