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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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 そう、僕が聞こえる様になったんじゃなくて…

「あ、葵さんが、伝えられる様になった?」

 すると…

「うふ、なんかそうみたいね…」
 と、まるで他人事の様に呟いてきた。

「え、あっ、いや、そ、それって…」

 そうなんだ…

 それって凄い事なんだ…

 いや、まるで超能力者みたいじゃないか?…

「え、超能力者なんかじゃなくてさぁ…」

 ほら、僕の心は筒抜けで…

「駿だからよ… 
 駿の心だから一つに繫がっているだけよ」
 と、シレっと言ってくる。

「あ、いや、そんな事は…」

 そんな事は無いと思うのだが…

「わたしも駿もぉ、本当に愛し合っているからよぉ」

 いや、それには違いないんだが…

 また、少し意味が違うと…

「ううん、違いないわよ、愛し合っている証、あ、か、し、よ…」
 と、本当に気楽に言ってくるんだ。

「そうなんかなぁ?」

「ええ、そうよぉ…
 その証拠にさぁ、駿しか聞こえないし、伝えられないんだからさ…」
 そう言ってキスをしてくる。

「愛してるわ…
 大好きよ…
 それより勉強しようよ…」

「あ、うん」
 そう、家庭教師、葵先生の登場である。

 こんな感じで僕と葵さんは春先を過ごしていったんだ…

 そして…

 この日常に変化が起きる…

 いや、葵さんに変化が起き始めたのは…

 梅雨真っ盛りの6月下旬…

 蒸し暑い毎日が続いていた頃だった…




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