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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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 そして葵さんに変化が起きた…

 いや、変化が起き始めたのは梅雨真っ盛りの6月下旬…
 蒸し暑い毎日が続いていた頃だった。

 その頃の僕と葵さんの日常は…

 平日はお互いに、中三の僕は徒歩で中学校に通い、葵さんは電車通学で高校に通っていた。

 そしてほぼ毎日葵さんの方が先に帰宅をし、僕が徒歩で帰宅途中に坂の上の葵さん宅の脇を通り、ピアノの調べを聴きながら…
『今、帰宅途中♡』と、LINEを送り、急いで帰宅して勉強道具を持って自転車で葵さん宅に向かう。

 そんな平日の日常であり…
 そしてこの頃の葵さんのピアノの演奏曲は以前の『エリーゼのために』ではなく、あの穏やかな調べである
『G線上のアリア』だったり、僕が曲名を知らないのだが、ほぼ穏やかなピアノ曲を演奏していた。

 また、土日や祝祭日の休日は、ほぼ毎回、前日から葵さん宅にお泊まりをしていたんだ…

 そしてもちろん、これは毎日欠かさずに女の子になって、あ、平日は服装だけで、土日祝祭日はお化粧もして完璧な女の子になり…
 最近はよく外出もしていたんだ。

 また、季節の移り変わりに伴い、新しい服を葵さんに買って貰ってもいたんだ…

 そんな日常だったのだが…

 突然、葵さんに変化が現れた。

 それは蒸し暑い梅雨の季節の6月下旬の平日…

 僕が中学校から帰宅途中に葵さん宅の横を通っていると…

「あれ?」

 また再び『エリーゼのために』が奏でられていたんだ…
 しかも、この『エリーゼのために』は以前から聴き慣れている曲調ではなく…

 どことなくハイペースで、荒々しい『エリーゼのために』の調べであったんだ。

 この時僕は、なんとなくだが、イヤな胸騒ぎを感じた…
 そしてこの『エリーゼのために』の調べが僕を呼んでいる、葵さんの悲鳴にも聞こえたんだ。





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