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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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「ねぇ、最近、学校でモテてるんじゃないのぉ?…」

 まずい、ダメだぁ、葵さんに心を読まれてしまう…

「あら、ほらぁ、そうなんだぁ…」

 実はこの一ヶ月あまりに後輩から二人ほど、同級生からも二人ほどからラブレターを貰い、アドレスを訊かれていて…
 それを、瞬時に想い浮かべてしまったんだ。

「やっぱりねぇ、ふぅん、そうなんだぁ…
 でもさぁ、よくわたしに隠せたわね?」

「え、だってそれは…」


 それは…

 そんな彼女達には全く興味が無いから…

 いや、興味が湧きもしないし、ときめきもドキドキも心の昂ぶりさえも、全く起きもしなかったから…

 もちろんアドレス等はスルーしたし、ラブレターも読むには読んだのだが、何とも感じなかったし…

 だから返事さえもせずに軽く流してしまっていたから…

 だから、葵さんの不思議な心のレーダーにも全く引っ掛からなかったのだろうと思われたのである。

「ふうん、そうなんだぁ…」
 と、今、僕の心の声を聴いて、そう呟いてきたのだ。

「だって…」

 そう、僕は、この葵さんの魅力を知ってしまっているわけだし…
 この美しく、妖しく、魅惑的な葵さんを本当に愛しているから…
 そんな葵さんと比べる事さえあり得ない事であるから…

 僕の心の想い、思い、には全く想い浮かぶ事が無かった訳だから…
 いくら葵さんとはいえ、心のレーダーに察知する事が出来なかったのだろうと思われた。


「だって…
 葵さん以上に綺麗で魅力的な女性なんていないし…
 ぼ、僕は本当に葵さんを愛しているから…」

「あ、ありがとう……駿…
 で、でもさぁ…」

 わたしはさぁ、女性、女じゃないですけどぉ…

「え、い、いや、葵さんは…
 僕には女性なんですっ…
 本当の、いや、それ以上の女性なんですっ…」

 僕は、言葉でも、心の中でも…

 そう叫んだんだ…




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