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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
 18

「あぁ、駿くん…好き…大好き…」

「ぼ、僕も…葵さんが…大好きです…」

 胸が、心が、締め付けられる様な、初めての感覚であった…

 こんな感覚は初めてだ…

「ねぇ、駿くん…」
 
「は、はい…」

「わたしの部屋に行こう…」
 そう囁きながら僕の手を取り、二階の自らの部屋に誘う。

「さぁ、どうぞ、入って…」

 二階の一番奥の部屋…

「あ…」
 だけど、その部屋に入って驚いてしまう…

 なぜならその部屋には、ベッドと机と、小さなテーブルしか無いのだ…

 テラスに出られる大きな窓…
 
 備え付けのクローゼットのドア…

 あとは…

 壁際に勉強机…

 窓脇にベッド…

 その脇に小さなテーブル…

 あとは空間…

 あとは、何も無い…

 飾りも、ポスター類も、カレンダーさえ貼ってない…

「何も無いでしょう…」
 ポツリとそう呟いてくる。

「う、うん…」

 あ…

 でも、ベッドの上に…

 細長い、抱き枕があった…


「さあ、こっちに…」

 しかし葵さんは、そんな僕の様子は意にも返さない感じで、ベッドの上へと誘ってくる…

「ほらぁ、早く、こっちに…」
 そして僕をベッド上の隣に座らせてきた。

「まずは、今から、キスの練習ね」

「え、き、キスの…」

「うん、だってぇ、駿くん、キス下手なんだもん」
 
 なんと、笑いながらそう言ってきたのである…

「そ、それは…」

「あ…、じゃあ、もうこれからはキスしないの?」
 意地悪な目で訊いてくる。

「い、いや、そ、そんな…」

「でしょう、だったらキスの練習しましょうよ…」

「あ、うん、は、はい…」

「キスでわたしが感じるぐらいになって欲しいなぁ」

 僕は…

 急にドキドキしてきた…

 そしてワクワクも、ズキズキもしてきてしまう…

「あ、ほら、もう、その気になってぇ」
 すると葵さんは笑みを浮かべ、僕の下半身を見ながらそう言ってきた。

「え…、あ、あぁ…」

 そう、僕はさっきの流れのままに二階に上がってきたから、下半身はスッポンポンであったのだ…
 そして、また、再び、勃っていたのである。

 それは…

 ドキドキ、ワクワク、ズキズキのせいであった…

「うふ、駿くんかわいい…」
 葵さんはそう囁き、キスをしてきた。

「さあ、キスの練習しよ…」



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