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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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 だから、今、僕は、この舞香ちゃんの言葉に、いや、そう言われるまで…
 全く、そんな想いさえも、思いもしなかったんだ。

 この頃の僕には、こうしたお互いの口唇による愛撫の快感だけで…
 十分に一体感を感じていたから、これ以上の、つまりは、お互いにひとつになるという結合のセックス等の欲望はそれほど、いや、ほぼ無かった。

「ほ、ほらわたし達はまだ中学生だし…」
 舞香ちゃんは僕の目を見つめ、そしてやや泳がせながら話してくる。

「うん…」

「そ、それにさぁ…
 あ、あの、わたしさぁ…」
 舞香ちゃんの目が微妙に潤んできた様に見え、そして更に泳いだ。

「うん?」

「あ、あの…ホントは…
 わたし……あ、あの、怖くてぇ…」
 そうなんだ、舞香ちゃんの本音は…
 セックスへの、いや、挿入に対する恐怖心だったんだ。

「あ、うん…」
 僕はそんな舞香ちゃんの言葉に、この目の潤みや、泳ぎの意味を理解をした。

「うん、そ、そうだよね…
 僕らはまだ中学生なんだから…」
 そう言って僕は舞香ちゃんを抱き寄せ、抱き締めていく。

「あぁ、し、駿、しゅんくん、ありがとう…」
 本音は、本当にまだそのセックスという事に対しての欲望、切望、想いは無いのであるが、なんとなく、そんな自分の思いを゙この腕の中に抱いている舞香ちゃんがシラケてしまうような気がしてしまい…
 そう、最もらしい言葉を言ったんだ。

「あ、駿くん、ご、ごめんなさい…ね」
 なぜか舞香ちゃんは謝ってきた。

「え、あ、うん、本当にまだいいから」
 僕は敢えて、まだ、という言葉を付け足してそう言う。

「うん、本当にごめんなさい…
 で、でも、こ、高校生になったら…」
 突然、そう言ってきた。

 おそらく野球部の先輩は、よほど舞香ちゃんにそんな感じで迫っていたのだろう…
 と、僕は思った。

「うん、そう、高校生になるまでガマンしてね」

「う、うん…」

「あ、ご、ごめん…」

「え、なんで?」

 何で舞香ちゃんは謝ってくるのか?

「うん、だって、なんかぁわたしぃ、当たり前の様に駿くんと高校生になるまで付き合うみたいな…
 図々しいわよね…」
 と、恥ずかしそうに、そして少し自虐気味に言ってきた。

 だけど、僕はそんな舞香ちゃんの言葉と、様子に…



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