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バガテル第25番イ短調 (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
26
その頃は…
拒絶反応の発作なんじゃないかってくらいに胸が、心臓が暴れて、苦しんで…
本当に大変だったの。
でね、救急搬送された病院に併設されている教会に偶然ピアノが置いてあってね…
まるで夢遊病の様にそのピアノに歩み寄り、弾いたその瞬間にね…
ピタリとその心臓の発作が止まったの。
そして心電図までもが、正常値に落ち着いたの…
その時初めて…
もしかしたら…
心臓の記憶の命令なんじゃないのか?…
そう想うようになってきたの…
そして…
スカートが履きたい衝動の時もそうだったし…
口紅を塗る、塗りたい想いの衝動の時もそうだった…
みんな、みんな、心臓が…
移植した心臓が…
命令してきたの…
「し、心臓の記憶の命令…って…」
驚き以上だ…
そ、そんなこと…
あるのだろうか…
「お医者様もね、懸命に検査や調べてくれたんだけど…
結果、さっぱり原因不明…」
そしてその時に…
海外で数例あるという…
『臓器の記憶転移(きおくてんい)』
の論文を調べてくれてね…
「もしかしたら…」
と、いうことになり…
それからは、両親も、いえ、わたし自身が、この心から湧き出してくる想いや、欲求、欲望に従うことにしたのね…
「そうしたら…」
「う、うん…」
「それからは…心臓は大人しく、落ち着いてくれていたの…」
え、くれていたのって?…
「さっきまではね…」
僕は、葵さんの話してくれている内容が…
あまりにも現実離れ、いや、突拍子も無い内容で驚いてしまっていたのだが…
まさか、この場面で葵さんがウソを話してくる訳が無い事も分かっているから…
余計に混乱してしまい、あまり理解できずにいた。
「さっきまではねって?…」
思わず、そう呟く。
「うん…」
結局はさ…
ピアノと、こうした日常の女装、ううん、女性としての日常生活…
これ位しか要求っていうか、求めてこないっていうかぁ…
それらを定着させたら鎮まった、いや、心臓がよりわたしと一体化した様な…
「そんな感じに落ち着き、病状も、症状も安定したの」
だからお医者様も…
「やっぱり一時的な拒絶反応だったのかも…という診断結果にしたのよ」
「拒絶反応…」
「うん、そう…」
その頃は…
拒絶反応の発作なんじゃないかってくらいに胸が、心臓が暴れて、苦しんで…
本当に大変だったの。
でね、救急搬送された病院に併設されている教会に偶然ピアノが置いてあってね…
まるで夢遊病の様にそのピアノに歩み寄り、弾いたその瞬間にね…
ピタリとその心臓の発作が止まったの。
そして心電図までもが、正常値に落ち着いたの…
その時初めて…
もしかしたら…
心臓の記憶の命令なんじゃないのか?…
そう想うようになってきたの…
そして…
スカートが履きたい衝動の時もそうだったし…
口紅を塗る、塗りたい想いの衝動の時もそうだった…
みんな、みんな、心臓が…
移植した心臓が…
命令してきたの…
「し、心臓の記憶の命令…って…」
驚き以上だ…
そ、そんなこと…
あるのだろうか…
「お医者様もね、懸命に検査や調べてくれたんだけど…
結果、さっぱり原因不明…」
そしてその時に…
海外で数例あるという…
『臓器の記憶転移(きおくてんい)』
の論文を調べてくれてね…
「もしかしたら…」
と、いうことになり…
それからは、両親も、いえ、わたし自身が、この心から湧き出してくる想いや、欲求、欲望に従うことにしたのね…
「そうしたら…」
「う、うん…」
「それからは…心臓は大人しく、落ち着いてくれていたの…」
え、くれていたのって?…
「さっきまではね…」
僕は、葵さんの話してくれている内容が…
あまりにも現実離れ、いや、突拍子も無い内容で驚いてしまっていたのだが…
まさか、この場面で葵さんがウソを話してくる訳が無い事も分かっているから…
余計に混乱してしまい、あまり理解できずにいた。
「さっきまではねって?…」
思わず、そう呟く。
「うん…」
結局はさ…
ピアノと、こうした日常の女装、ううん、女性としての日常生活…
これ位しか要求っていうか、求めてこないっていうかぁ…
それらを定着させたら鎮まった、いや、心臓がよりわたしと一体化した様な…
「そんな感じに落ち着き、病状も、症状も安定したの」
だからお医者様も…
「やっぱり一時的な拒絶反応だったのかも…という診断結果にしたのよ」
「拒絶反応…」
「うん、そう…」