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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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「あ、あ、葵さん…」

 着ていたワンピースを脱ぎ…

 そして裸になった…


「ほら…駿…」

 見て…

 冬の蒼い月明かりに照らされながら、浮かび上がっている葵さんの裸は…


「ほら…
 正真正銘の…」

 男でしょう…

 葵さんはそう囁いてきた…


「ぁ…ぁぁ…ぅ…」

 実は…

 僕は…

 裸の…

 全裸の…

 葵さんの全裸を見るのは…

 初めてなのだ…

 いつも…

 いつもは、たいがい家に誰かしらがいるからと…

 ワンピースを捲り上げたり…

 ズボンを下げただけと…

 決して完全に洋服を脱ぎ、裸には、全裸には…

 お互いになったことはなかった…

 だから、初めてだった…


「ぁぁ…ぅ…」
 僕はドキドキしていた。

 なんて…

 なんて綺麗なんだ…

 た、確かに…

 カラダは…

 股間の葵さん自身が、なぜか…

 上を見上げて、熱く脈打っているから…

 確かにカラダは男なのだが…

「き、キレイ…です…」

 そう…

 冬の蒼い月明かりに青白く浮かび上がっている、葵さんの裸は…

 美しく…

 例え、脈打つ存在があっても…

 僕には…

 女性にしか見えない…


「ほら…男なの…よ…」

 そして、その美しい裸の胸の中心には…

 お臍まで走る手術痕がピンクの縦線として見えていた。


「あ、いや…」

 違う、男じゃない、男には見えない…
 と、心の中で叫ぶ。

 白々しくなってしまうようで、敢えて言葉には出さない…

 だって…

「ありがとう…
 でもね…
 悲しいけど男なのよ…
 駿のことが大好きな男なのよねぇ…」

 ほら、やっぱり葵さんには僕の心の声は聴こえている…

「あ、葵さん…」

「さぁ、駿も脱いで…」


 そして僕は… 

 僕も…

 服を脱ぎ捨て…

 裸になった…




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