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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
 51

「こ、ここを、ここにさ…」

 挿入れてひとつになるのよ…

「え、ええっ、お、お尻にっ?」

「うん、そう、知らなかったの?…」
 
「うん、は、はい…」

 本当に、僕は…

 そんなこと知らなかった…

「あら…」
 すると葵さんは、にこやかに、優しい笑みを浮かべてくる。

「知らなかったんだぁ…」

「う、うん、お、お尻にって?…」

 僕は本当に知らなかった…

 もちろん、男女のセックスという営みは理屈は分かっている…

 だけど、男同士のセックスは…

 こうして手や、指や、唇や、舌で愛し合うものだと普通に思っていたし…

 キスをして…

 握り合い…

 弄り合い…

 舐め、しゃぶり合う…

 これが、いや、これで十分にひとつにつながっている…
 本気でそう思っていた。

 だってまだ中二だから…

「お、お尻にって…」

 だいたい挿入いるのか?…

「うん挿入いるらしいの…」
 
 だけどね、準備して、ゆっくりと時間を掛けて慣らさないと…

 かなりキツイらしいの…

「そ、そうなんだ…」

 正に『寝耳に水』いや『青天の霹靂』であった…

「だけどね…
 ううん、だからね…」

 わたし怖くって…

「でもね…
 駿に悪いかなってさぁ…」

 でも怖くって…

 どうしようって…

「あ、葵さん…」

 葵さんはそう呟きながら…
 なんと、涙をこぼしてきたのだ。

「…ぁ、駿、ごめんね…」

「あ、い、いや、葵さん、謝らないでよ…
 僕…
 僕は…
 そんなこと…」

 そう…

 知らなかったんだから…

 そんなこと何とも思っていないんだから…

 それに…

「え、それに?…」

「それに…」

 葵さんのお尻になんか、僕だって怖くて挿入れられないよっ…

「え、あ…」

 それは本当の気持ちだ…

 お尻に挿入れる…

 怖いよ…

「それに、僕は…僕は…」

 今までだって…

 ううん、今の今まで、十分、葵さんとひとつになっている、いや、つながって、融けているって…

「思ってます、ぁ、いるし…」

「し、しゅん…」

 そう僕が言ったら、葵さんは感極まった感じで更に涙を溢れさせ、僕にキスをしてきた…

「しゅん、大好き、愛してる…」

「僕も葵さんが大好きです、愛してる」

 そのキスは涙で塩辛かった…





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