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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
 5

「え…と、確か、駿くんだったよね?」

「えっ…」

 なぜか、彼女、いや、葵さんは僕の名前を知っていた…

「だって、帰りにウチの横を通りながら、一緒のお友達からそう呼ばれていたから…」

「え、あ、そ、そうなんですか…」

「うん…
 たまぁにね、部屋から見ているの…」
 そう葵さんは呟く。

 僕はドキドキとズキズキとした昂ぶりが止まらないでいた…

 だって…

 こんなに綺麗な葵さんが…

 どこから見ても綺麗な女性にしか見えない葵さんが…

 男なんて?…

 そしてそのドキドキとズキズキは、また、不思議な昂ぶりにも感じていた。

「ねぇ、立って…」
 すると葵さんが、いつまでも脚元にしゃがんでいる僕の手を取り、そう言いい、引っ張ってきたのだ。

「ほら、よいしょ」

「あっ」
 その葵さんの引っ張る力が意外に強く、勢いあまって僕の顔が近付いてしまう。

「駿くんって…かわいいね…」
 
「あ…」

 すると、葵さんはそう囁き…

 僕にキスをしてきたのだ…

「…ぁ…ぅ…」

 そして唇を離し…

「初めて?…」
 そう囁く。

「う…」
 僕は頷いた。

 すると…

「かわいい…」
 葵さんはそう囁き、また、再び、唇を重ねてきたのだ。

「ぁぁ…」

 僕は、まるで魔法に掛かったかの様に、全身から力が抜け、そして葵さんに頭を、肩を抱かれ、引き寄せられ…
 
 舌先が入ってきた…

「……ぅ…んん……」

 その舌は…

 甘かった…

 そして…

 心が痺れ…

 いや、蕩けてしまう…


 ドキドキドキドキ…

 ズキズキズキズキ…







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