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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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「あららぁ…駿…」

 すると葵さんはルージュを手に取り…

「動かないでぇ…
 ダメよぉ、動いちゃ…」

 そう囁き、僕の顔を押さえて…
 ルージュを塗ってきた。


「あ、あらぁ…駿…」

 すっごくかわいいんだけどぉ…

「ほらぁ」
 すると葵さんはそう囁き、僕の顔を鏡に向かせる。


「あ…」

「ね、かわいいでしょう?」

「ぁ…ぅん…」

 僕は…

 その鏡に映っている、ピンク色のルージュを塗った自分の顔を見て…

 少しドキドキと高鳴って、いや、昂ぶりも感じていた。

「もともと駿はさぁ、かわいい、キレイな顔してるもんねぇ…」
 
「え、そ、そんなぁ…」

 でも、思い当たる節はある…
 なぜなら僕は、小学生時代はよく女の子に間違えられた事が幾度となくあったからだ。

 それがイヤで中学校に入学してすぐに今のショートで空いた、ツンツンヘアスタイルに変えたのだから…

「でもわたしはさぁ、そんなキレイな駿に一目惚れしたのよぉ…」

 だから、ルージュが似合うのも大好き…

「ほらぁ、駿、よぉく鏡を見なよぉ」

 自分でいうのも何なんだけど…
 本当に似合っていた。

 そして葵さんと僕との二人で鏡に並んで見ると…
 かわいい女の子が二人並んでいる様に見える。

 そして…

「あ、そうだ、駿、部屋に行こうよ」

 そんな葵さんの言葉が…


 この後の僕の心を…

 この先の僕の心を…


 このクリスマスイブの夜は…


 僕にとっての…


 運命の夜となった…


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