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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
 86

 そして…

「しゅん、かわいくて、キレイよ…」
 葵さんがそう囁きながら肩を抱き寄せて、唇を近づけてくる。

 僕はドキドキと心が震える…

 だけど…

「あっ、おぉっとぉ」
 葵さんがいきなりそう呟き、スッと近づけてきた顔を離す。

「え…」

「あぶない、あぶないわぁ…」

「え?」

「だってぇ、せっかくきれいに、かわいくメイクしたのに、また夢中になっちゃったら取れちゃうじゃん…」

「あ…」

「まだ夕方だしさぁ、夜までガマンよ」

 ガマンね…

 と、微笑みを浮かべながらそう囁いてきた。

「あ…は、はい」

 そして僕もそれには納得してしまう…

 だって、このメイクをした自分の顔に…

 いや、この別人、違う…

 女の子に変身したこの鏡に映っている自分を…

 本当に気に入ってしまっていたからだ…

 いや、好きになってしまったかも…

「でも、ダメだからね、あくまでも駿の一番はわたしだからね」

 すると、やっぱり僕の心の声が、想いがわかる葵さんはそう云ってきたのだ…

「え、あ、もちろんです」

「ダメよ…」

 浮気だからね…

 そう意地悪気な、いや、悪戯っ子の目を向けながら言ってきた。

「ああん、駿にぃ、キスしたいなぁ」
 
 それは僕もそうだ…

「でも…ガマン、ガマンよ」

 あっ、そうだ…

「下に行こう、ここの部屋にいるからいけないんだわ」

 あ、そう、ピアノ弾こう…

 そう云って僕の手を握り、リビングへと降りていく。

 そして葵さんはピアノを弾き始める…


「あ、この曲は…」

「そうよ、さっきの『G線上のアリア』よ」

 穏やかな、心落ち着く、美しい調べの曲である…

「なんかさぁ、最近はさぁ、すっかりこれが弾きたくなるのよ」

 わたしのこの心がさぁ…

 自然にこれを弾かしてくるのよねぇ…

「こうして駿と仲良く愛し合えているからかしらねぇ」
 と、葵さんはピアノを弾き奏でながら囁いてくる。

 しかも、突然、この譜面が脳裏いっぱいに降りてきたそうだ…

「で、でも、僕はこの曲好きです」

 そう、この『G線上のアリア』を聴くと本当に心が穏やかに、なんとなくだが懐かしい感じもしてくるのだ…

 しかもクラシックなんて学校の授業でしか聴いた事がないくせに、なぜか懐かしい感じがしてくるのである。



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