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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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「で、でも、僕はこの曲好きです」

 そう、この『G線上のアリア』を聴くと本当に心が穏やかに、なんとなくだが懐かしい感じもしてくるのだ…

 しかも僕は、クラシックなんて学校の授業でしか聴いた事がないくせに…
 なぜか懐かしい感じがしてくるのだ。

「それはさぁ、きっと…」

 この曲が、この穏やかな美しい調べがさぁ…

 駿の心に訴えてきてるからじゃないのかなぁ…

「え…」
 また葵さんは僕の心の声にそう応えてくる。

 本当に葵さんは不思議だ…

「きっとさぁ…

 わたしと駿が愛し合ってるってことなのよぉ…」

 だけど…

 それには間違いはない…

 こね前までの『エリーゼのために』も素敵だったけど…

 いや、昂ぶったけど…

 この今の『G線上のアリア』は本当に心が穏やかに、緩やかに、そして懐かしい感じになってくる…

 本当に僕は葵さんを愛しているし…

 大好きなんだから…

「ありがとう…うれしい」
 
 また…

 そう応えてきた。

「わたしも…」

 愛してるわ…

 
「あ、葵さん…」

 僕と葵さんはこの『G線上のアリア』の美しい調べに酔いしれていく…


「わたしね…」

 すると突然、葵さんはピアノを弾きながら話し始めてきた…

「こんなに毎日が穏やかな心で過ごせているのは…」

 本当に駿とこうなるまで無かったのよ…

「え…」
 
「だってぇ…」

 もう、生まれた時から心臓がダメでさぁ…

 いつも発作に襲われてさぁ…

 怖くて、不安で…

 物心付いた時からは…

 常に『死』という怖さが…

 そしてようやく移植手術が出来たのも奇跡と…

 お父さまの財力のおかげ…

 でもね、移植手術をしてからもずうっと、ずうっと、不安な想いは拭えなかったの…

 本当に最初はものすごくこの心臓、いや、この心に違和感があって…

 そして…

 どんどん、違う想い、思い、人格が夜毎に夢の中に表れてきて…

 もうこの心臓に食べられちゃう…
 
 そう本当に思っていたのよ…

「え……」
 僕はそんな葵さんの慟哭の言葉に絶句してしまう。

 いや、応えようが無かったんだ…


「でもね…」



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