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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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「だ、だったら、今度の、この…
『G線上のアリア』にも何かしらの意味があるのかなぁ?…」
 と、訊くと…

「うーん、どうかしらね?」
 
 葵さんは首をかしげながら、呟いてきた…

 そして…

「きっとねぇ…」

 ほら、もうこうしてさぁ、わたしと駿はさぁ、愛し合って落ち着いているじゃなぁい…

「うん」

「だからさぁ、この心がさぁ、落ち着いて穏やかな気持ちであるってさぁ…」

 わたしにだけじゃなくて、駿にも伝えたくてさぁ…

 この『G線上のアリア』を選んでわたしに弾かせてるんじゃないのかなぁ?…

「あ…」

 そうなのか、そうなんだろうか…

 でも、葵さんがそう言うんだから…

「うん、そうだよ、きっとね」

 それに実際にわたしは、ううん、この心もさぁ…

 駿と愛し合うようになってからは、毎日、この楽曲みたいにさぁ…

 穏やかで、楽しいもん…

 葵さんがそう言うんだから、僕もそう想うようにする。


「それよりさぁ、お腹空いたよね?」

 そう言われれば、もう6時近い…

「クリスマスしようよ」

「うん」

 大好きな人と初めて過ごすクリスマスだ…
 僕は心が昂ぶってくる。

 だって…

 今までは、クリスマスなんて…

 家族と過ごした事しか無かったから…

 ただ、フライドチキンを食べて…

 ケーキを食べて…

 シャンパン風のサイダーを飲むだけだったから…

 そして葵さんがキッチンに入り準備を始める。

 だが…

「あっ、無いなぁ…」

 葵さんが何かを探しながら…

「ねぇ、駿…
 あそこのコンビニでさぁ、ケチャップ買ってきてよ」
 そして、そう言ってきたんだ。


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