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  バガテル第25番イ短調  (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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 そして葵さんがキッチンに入って、料理の準備を始めていく。

 だが…

「あっ、無いなぁ…」

 葵さんが何かを探しながら…

「ねぇ、駿…
 あそこのコンビニでさぁ、ケチャップ買ってきてよ」
 そして、そう言ってきたんだ。



「ケチャップが無いのよ、お願い、買ってきてよぉ」

「は、はい、いいですよ」
 と、僕は軽く返事をする。

「あっ、い、いや、あ…」

 だが…

 僕は…

 女の子になったままだったんだ…

「あ、いや、葵さん、僕は…」

 すると葵さんは僕を一瞥し…

「うん、大丈夫よ、どっから見てもかわいい女の子にしか見えないからさぁ…」
 と、満面の笑みを浮かべながら言ったんだ。

「え、い、いや…」

 だが、そんな簡単な問題ではない…

 確かにそのコンビニは坂道を降りて直ぐにある…

 だけど、そのコンビニはけっこう繁盛していていつもお客が沢山いて…

 もしかして同級生や知り合いがいる可能性があって…

 いや、かなりの確率で居るはずであり…

「絶対にぃ、大丈夫よぉ…
 全然さぁ、駿に見えないからさぁ…」

 葵さんは…
 そんなコンビニに買い物に行けと言ってくる。

「え、で、でも…」

 確かにバレないかも…

「ねぇ、ケチャップが無いとさぁ、ダメなのよぉ」

 ドキドキしてきていた…

 そして実は…

 僕の心の奥に…

 絶対に嫌ではなく…

 行ってみたい…

 外に出てみたいかも…

 そんな想いが湧いていたんだ…





 
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