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バガテル第25番イ短調 (エリーゼのために)
第1章 エリーゼのために…
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そして実は…
僕の心の奥には、絶対に嫌ではなく…
行ってみたい、外に出てみたいかも…
そんな想いが湧いていたんだ…
「あっ、そうだ駿、アレ、ウィッグがあるから」
葵さんはそう言って二階へと駆け上がり、ウィッグ、つまり、カツラを手にして降りてきた。
「ほら、これ付ければ完璧よ」
そう言いながら、その肩までの黒髪のウィッグを僕に被せてくる。
「うわ、あらっ、すっごいかわいいわっ…
うん、更に別人だわ…
絶対に駿って分からないわ…」
そう言って玄関横の姿見の前に、僕を連れていく。
「あっ、うわっ………」
僕は絶句してしまう。
本当に別人なんだ…
すごくかわいいんだ…
そして激しくドキドキと高鳴ってきた。
「あらぁ、もう、やだわ、本当にかわいいし」
なんか嫉妬しちゃうわ…
「え…」
葵さんはそのウィッグを付けて、完全に女性に、いや、美少女になった僕の姿を見つめながらそう呟いた。
「はい、じゃあ、コンビニまでお願いね、あ、わたしのパンプスあるから…」
と、玄関でパンプスを履かされ、僕はお屋敷から出されてしまった。
「いってらっしゃぁい」
そう言う葵さんの顔は、意地悪気味な笑顔をしている。
「あ、は、はい…」
「ダメだよ、ナンパされちゃぁ」
笑いながら見送ってきた。
ドキドキドキドキ…
うわぁ…
女性の格好をして、いや、服を、スカートを履いて…
外に出る…
ドキドキドキドキ…
心臓が飛び出すくらいに高鳴ってきていた。
だが…
微かに、いや、かなり…
本当は…
ワクワクと昂ぶってもいたんだ…