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千一夜
第54章 第七夜 最終章 真空のゆらぎ
「沢田さんは、沢田絵里さんは生きているのか?」
「その質問に答えるつもりはないわ。理由はただ一つ、亮ちゃんのため」
「俺のため?」
「知らない方がいいこともあるのよ。亮ちゃん、何度訊ねられても私は答えない」
「そうか……」
 沢田絵里が今どうしているのか、私は知ることが出来ない。京子は知らない方がいいと言った。それが意味するものは……?
「亮ちゃん、気が変わらない?」
「気が変わる?」
「私の提案のこと。私と旅をすること」
「変わらないよ。俺は君と旅をするつもりはない。理由は」
「わかったわ」
 京子は私の言葉を遮った。
「京子ちゃん、今君は幸せか?」
「ふふふ、もちろん幸せよ」
「そうか」
「亮ちゃん、私置いてきぼりは嫌なの。だから私が先にここを離れるわ。いいでしょ?」
「ああ」
「亮ちゃん」
 京子は私に背を向けてそう言った。
「何だ?」
「亮ちゃん、またね」
 京子はそう言うと歩き出した。
「京子ちゃん、“また”はないよ。さよならだ」
 私は京子の背中に向かってそう言った。
 京子が立ち止まる。
「亮ちゃん、亮ちゃんには見えるかな?」
 京子は私に背を向けたままそう訊ねた。
「何が?」
「ふふふ、まだ見えないんだ。亮ちゃん、またね」
「……」
 “また”はないよと、私は心の中でもう一度京子に言った。
 私は京子の背中が見えなくなるまで、弥勒菩薩の前で立っていた。京子の後ろ姿に「幸せになるんだよ」と手を合わせて祈った。
 それから私は姿勢を正して宝冠弥勒と向かい合った。「ありがとうございました」私はそう言って頭を深く下げた。
 霊宝殿を出ると、私の体に冬の京都の空気が纏わりついた。マフラーを忘れたことが悔やまれる。歳のせいなのか手足も冷える。今度冬の京都に来るときは手袋が必要かもしれない。
 目的が観光ならば、もう少し境内を見て回るのだろうが、駐車場には咲子と竹内が私を待っている。急いで駐車場に向かおうとしたときだった。
「何をしているんだ。車の中で待っていろと言っただろ」
 咲子が私を待っていた。咲子は私を見つけると小走りで私のところにやって来た。
「バカ」
 咲子はそう言うと私の胸の中に飛び込んできた。
「寒かっただろ」
 私は咲子を強く抱きしめた。
「亮ちゃん、私たちの街に帰ろう」
「異論無しだ」
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