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千一夜
第62章 第八夜 island 満月の夜
「ママ、ママ、起きてよ、もう朝だよ」
目を瞑っていてもそれが良幸の声だとわかった。ただ、目を開けるのが億劫だったので、私は目を瞑ったまま良幸に答えた。
「おはよう。ラジオ体操は?」
「もう終わったよ。パパとお兄ちゃんと僕と、それからおじさんとおばさんの五人でラジオ体操したんだ」
「そうなの?」
目を開けると、良幸が私の顔を覗き込んでいた。部屋の入り口には兄の良輔が立って私を見ていた。
「ママだけだよ、お寝坊さんなのは」
そう言ったのは良輔だ。
「ごめんなさい、ママ凄く疲れちゃったのよ」
あなたのパパとお風呂の中でも交わったの。だからもうへとへとなんて口が裂けても言えない。
「パパが言ってたよ、ママはいつも大変なんだから島ではゆっくり休ませてあげないさって。パパは優しいよね」
と良輔が自分の父を自慢する。
「良輔もパパみたいな優しい男になりなさい。良幸もね」
「当り前だよ。僕も良幸もパパみたいな人間になる。ママ、学校の先生が言ってたよ。今は男とか女とか軽々しく言ってはいけない時代なんだって」
「はぁ~」
溜息が漏れる。良輔の言っていることに間違いはない。間違いはないのだが、何だか息が詰まりそうだと私は感じている。
「ご飯は一緒に食べようとパパが言ってた」
「わかったわ。あっ、それより良輔、横浜に帰ったらテスト勉強してよ」
河田は良輔や良幸が塾に通うことは今でも認めていないのだが、塾が主催するテストを受験することだけは目を瞑っている。
「簡単すぎるんだよな。だからまた僕が一番だよ」
「油断禁物。ママがいつも言ってるでしょ。パパは東京大学を卒業しているの。だから良輔も良幸も絶対に東大に行かなければならないの。わかった?」
「ママの大学は?」
良幸が私に顔を近づけてそう訊ねた。
「ママの大学はどうでもいいの。良輔と良幸に行って欲しい大学はパパの大学、いいわね?」
「なるほど」
「良輔、感心しなくていいの。とにかく勉強してよ」
「ママ、チューして」
朝が苦手な子供たちを起こすために、私は毎朝二人の頬っぺにキスをする。私は今日、子供たちに起こされた。いつもとは違うシチュエーションのせいで、良幸が私にキスをせがんだ。
「はい、チュー」
良幸の頬にキスをする。
「良輔もこっちに来なさい」
「仕方ないな」
良輔が照れながら頬を出した。
「はい、チュー」
目を瞑っていてもそれが良幸の声だとわかった。ただ、目を開けるのが億劫だったので、私は目を瞑ったまま良幸に答えた。
「おはよう。ラジオ体操は?」
「もう終わったよ。パパとお兄ちゃんと僕と、それからおじさんとおばさんの五人でラジオ体操したんだ」
「そうなの?」
目を開けると、良幸が私の顔を覗き込んでいた。部屋の入り口には兄の良輔が立って私を見ていた。
「ママだけだよ、お寝坊さんなのは」
そう言ったのは良輔だ。
「ごめんなさい、ママ凄く疲れちゃったのよ」
あなたのパパとお風呂の中でも交わったの。だからもうへとへとなんて口が裂けても言えない。
「パパが言ってたよ、ママはいつも大変なんだから島ではゆっくり休ませてあげないさって。パパは優しいよね」
と良輔が自分の父を自慢する。
「良輔もパパみたいな優しい男になりなさい。良幸もね」
「当り前だよ。僕も良幸もパパみたいな人間になる。ママ、学校の先生が言ってたよ。今は男とか女とか軽々しく言ってはいけない時代なんだって」
「はぁ~」
溜息が漏れる。良輔の言っていることに間違いはない。間違いはないのだが、何だか息が詰まりそうだと私は感じている。
「ご飯は一緒に食べようとパパが言ってた」
「わかったわ。あっ、それより良輔、横浜に帰ったらテスト勉強してよ」
河田は良輔や良幸が塾に通うことは今でも認めていないのだが、塾が主催するテストを受験することだけは目を瞑っている。
「簡単すぎるんだよな。だからまた僕が一番だよ」
「油断禁物。ママがいつも言ってるでしょ。パパは東京大学を卒業しているの。だから良輔も良幸も絶対に東大に行かなければならないの。わかった?」
「ママの大学は?」
良幸が私に顔を近づけてそう訊ねた。
「ママの大学はどうでもいいの。良輔と良幸に行って欲しい大学はパパの大学、いいわね?」
「なるほど」
「良輔、感心しなくていいの。とにかく勉強してよ」
「ママ、チューして」
朝が苦手な子供たちを起こすために、私は毎朝二人の頬っぺにキスをする。私は今日、子供たちに起こされた。いつもとは違うシチュエーションのせいで、良幸が私にキスをせがんだ。
「はい、チュー」
良幸の頬にキスをする。
「良輔もこっちに来なさい」
「仕方ないな」
良輔が照れながら頬を出した。
「はい、チュー」

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