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千一夜
第63章 第九夜 隣人たちとの狂宴
海の近くの小さな村かもしれない。もしかしたら山の中の村かもしれない。
そこには毎年祭りがやってくる。村人が待っていた祭り。村の広場には提灯が灯されている。暗くはない。月の光と星の輝きが村の広場を照らしてくれる。
浴衣を着た大人や子供がいて、誰かが内輪を持っていたりする。行きかう人たちははみんな笑顔だ。
“おまつり”が流れたとき(正確に言うと、ギタリストが弦をやさしく弾いたとき)、僕の頭の中にその風景が映し出された。
葵祭でもない、祇園祭や時代祭りでもない。どこかの村の小さなおまつり。
「今聴いてもええ曲や。京大の学生さん、これは五十年以上前に作られた曲や。よう聴いてみ、ギターやベース、ドラムにキーボードの音、そしてボーカルの声がしっかり聴くことができるやろ。それぞれの楽器とボーカルが一つに溶け合っているわな。完璧や。こんなええ演奏されたら嫉妬してまうわ。昔はな、みんなこうやったんや。コンピューターもスマホもあらへん時代や。そやさかい、どないしてええ音を出すのかみんな四苦八苦してたんやで。誤魔化しがきかへんさかい、みんなしっかり演奏してるわ。音を作るってそういうことやで。音楽は簡単じゃない、難しんや。でもな、四人囃子は今二人だけになりよった。ベースもキーボードも向こうの世界に逝きよった。寂しいな……ほんまに寂しいわ」
元ミュージシャンにかける言葉が見つからない。でも僕はこう言った。
「いい曲です。素晴らしい演奏です。僕の心が揺れました」
僕の本心。
「ははは、心が揺れたって、あんたええこと言うわ」
「あの、一つ相談したいことがあるんですが」
「何や?」
「実はレコードを買っても聴くための道具がないんです。スピーカーとか……そういうものがないんです」
「ははは、あんたおおもろい学生はんや。よし、揃えたるわ。ええものを探して安くあんたに譲るわ。一週間待っとき。それでええやろ?」
「よろしくお願いします」
三枚のレコードとオーディオセットは、一週間後に僕の部屋にやってくる。
僕は元ミュージシャンの店を出た。自転車に跨り京都の街を走る。四年間、広島で僕を支えてくれた相棒。
「よう相棒。京都でもよろしくな」
僕は相棒にそう声をかけた。
そこには毎年祭りがやってくる。村人が待っていた祭り。村の広場には提灯が灯されている。暗くはない。月の光と星の輝きが村の広場を照らしてくれる。
浴衣を着た大人や子供がいて、誰かが内輪を持っていたりする。行きかう人たちははみんな笑顔だ。
“おまつり”が流れたとき(正確に言うと、ギタリストが弦をやさしく弾いたとき)、僕の頭の中にその風景が映し出された。
葵祭でもない、祇園祭や時代祭りでもない。どこかの村の小さなおまつり。
「今聴いてもええ曲や。京大の学生さん、これは五十年以上前に作られた曲や。よう聴いてみ、ギターやベース、ドラムにキーボードの音、そしてボーカルの声がしっかり聴くことができるやろ。それぞれの楽器とボーカルが一つに溶け合っているわな。完璧や。こんなええ演奏されたら嫉妬してまうわ。昔はな、みんなこうやったんや。コンピューターもスマホもあらへん時代や。そやさかい、どないしてええ音を出すのかみんな四苦八苦してたんやで。誤魔化しがきかへんさかい、みんなしっかり演奏してるわ。音を作るってそういうことやで。音楽は簡単じゃない、難しんや。でもな、四人囃子は今二人だけになりよった。ベースもキーボードも向こうの世界に逝きよった。寂しいな……ほんまに寂しいわ」
元ミュージシャンにかける言葉が見つからない。でも僕はこう言った。
「いい曲です。素晴らしい演奏です。僕の心が揺れました」
僕の本心。
「ははは、心が揺れたって、あんたええこと言うわ」
「あの、一つ相談したいことがあるんですが」
「何や?」
「実はレコードを買っても聴くための道具がないんです。スピーカーとか……そういうものがないんです」
「ははは、あんたおおもろい学生はんや。よし、揃えたるわ。ええものを探して安くあんたに譲るわ。一週間待っとき。それでええやろ?」
「よろしくお願いします」
三枚のレコードとオーディオセットは、一週間後に僕の部屋にやってくる。
僕は元ミュージシャンの店を出た。自転車に跨り京都の街を走る。四年間、広島で僕を支えてくれた相棒。
「よう相棒。京都でもよろしくな」
僕は相棒にそう声をかけた。

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